雪霊続記(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
雪の山路で出会う行軍の影
- 幻想
- 怪奇
- 文字数
- 6,121字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 福井県
この作品について
『雪霊記事』の続き。末尾には同じく1921年(大正10年)4月とある。語り手は、故郷から東京へ帰る途中で雪に閉ざされた汽車を降り、お米さんのもとを訪ねるかどうかを迷いながら吹雪の中を進む。雪の渦、紫陽花を思わせる青い光、犬、そして雪に埋もれた学校に現れる兵士たちと、怪異が次々に襲いかかる。雪の描写の密度と幻想の濃さが、続編の見どころである。作中には、今日では不適切とされる表現があるが、当時のまま残されている。
あらすじ
故郷での用事を済ませて東京へ帰る途中、語り手は、決心がつけば武生で降りて、かつて世話になったお米さんの里を訪ねようと考えていた。しかし大雪のため、汽車は途中で動かなくなる。語り手は旅籠の飯や唄、吹雪の様子に打たれながら、お米さんの住む里を目指して雪原に踏み出す。雪の渦に巻かれ、倒れ、遠い山並みの下で孤独に死を覚悟する。紫陽花の花に包まれたような青い光と、雷鳴の後、一匹の犬が雪の道を開いて語り手を導く。犬について行くと、雪に埋もれた学校の講堂に、十六人の兵士が背嚢も解かずに食事をとっていた。語り手が近づくと、兵士たちは同じ動作で顔を背け、犬は大口を開けて黒板に息を吐く。語り手は学校の廊下に倒れ、翌早朝、小使部屋の炉の焚火に救われて蘇生する。
登場人物
- 私 お米さんを訪ねようとして雪に閉ざされる語り手
- お米さん 語り手の大恩人。雪の里に暮らす
- 犬 吹雪の中で語り手を導く犬
- 十六人の兵士 雪に埋もれた学校の講堂に現れる行軍の兵
冒頭部(原文より)
機会がおのずから来ました。 今度の旅は、一体はじめは、仲仙道線で故郷へ着いて、そこで、一事を済したあとを、姫路行の汽車で東京へ帰ろうとしたのでありました。――この列車は、米原で一体分身して、分れて東西へ馳ります。 それが大雪のために進行が続けられなくなって、晩方武生駅(越前)へ留ったのです。強いて一町場ぐらいは前進出来ない事はない。が、そうすると、深山の小駅ですから、旅舎にも食料にも、乗客に対する設備が不足で、危険であるからとの事でありました。
「雪霊続記」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
一行が遭難の日は、学校に例として、食饌を備えるそうです。ちょうどその夜に当ったのです。が、同じ月、同じ夜のその命日は、月が晴れても、附近の町は、宵から戸を閉じるそうです、真白な十七人が縦横に町を通るからだと言います――後でこれを聞きました。 私は眠るように、学校の廊下に倒れていました。 翌早朝、小使部屋の炉の焚火に救われて蘇生ったのであります。が、いずれにも、しかも、中にも恐縮をしましたのは、汽車の厄に逢った一人として、駅員、殊に駅長さんの御立会になった事でありました。
「雪霊続記」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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