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金色の死(谷崎潤一郎)のあらすじ・登場人物

全財産を美に注いだ男

  • 心理

谷崎潤一郎 1914年(大正3年)12月 「東京朝日新聞」

文字数
22,787字
読了目安
約46分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

谷崎潤一郎が1914年(大正3年)、「東京朝日新聞」に連載した短編小説。「私」の少年時代からの友人・岡村君は、莫大な財産を、ひたすら自己の「芸術」――肉体の美と、それを飾りたてる絢爛たる美の世界の実現――のために注ぎ込んでいく。芸術至上主義を極限まで推し進めた岡村君の生き方を通して、耽美派・谷崎の芸術観が鮮烈に打ち出された、初期の異色作である。

あらすじ

「私」の少年時代からの友人・岡村君は、幼いころから「私」とよく似た、あらゆる方面に才能を示す少年だった。だが長じるにつれ、二人の芸術観は大きく分かれていく。「私」が文学の道へ進んだのに対し、莫大な財産を受け継いだ岡村君は、いっさいを、自己の肉体の美と、それを取り巻く絢爛たる美の世界の実現のために捧げるようになる。彼にとって最高の芸術とは、絵画でも彫刻でも文学でもなく、生きた人間の肉体そのものの美にほかならない。岡村君は、人里離れた山中に、あらゆる美をつくした幻想的な芸術の楽園を築きあげ、美しい男女の裸体を配した、生きた芸術の絵巻を現出させる。そしてその究極の完成として、彼はみずからの肉体を金色に塗りあげ、「金色の死」を遂げるのだった。芸術のために全力・全身をささげ、十分な成功のうちに死んでいった岡村君を、「私」は幸福な人間だったと語る。彼の芸術は幻のように現れ、その死とともに地上から消え去ったが、彼は偉大なる天才、曠世の芸術家だったのだ――。芸術至上主義と肉体美への陶酔を、耽美派・谷崎が鮮烈に打ち出した初期の異色作である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 岡村君は私の少年時代からの友人でした。丁度私が七つになった年の四月の上旬、新川の家から程遠からぬ小学校へ通い始めた時分に、岡村君も附き添いの女中に連られて来て居ました。彼と私とは教場の席順が隣り合って居て、二人はいつも小さな机をぴったり寄せ附けて並んで居ました。そればかりではなく、岡村君と私とはいろ/\の点でよく似たところがあるように思われました。

「金色の死」谷崎潤一郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 岡村君はたしかに幸福な人間でした。何故かと云うのに、彼は自己の全力、全身を挙げて自己の芸術の為めに尽し、而も十分な成功を遂げたからです。彼の芸術は忽ち幻のように地上から消え失せてしまいましたけれど、彼が偉大なる天才であり、曠世の芸術家であったことは、恐らく私一人が知って居るばかりでしょう。

「金色の死」谷崎潤一郎(青空文庫)

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