老年(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
雪の夜の一中節と老人
- 心理
- 文字数
- 3,583字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
雪の日、橋場の料理屋で一中節の順講が開かれる。座敷の末座に控える老人は、若いころ放蕩と遊芸で身代をつぶした房さん。三味線の音に心を動かされる老人の姿と、廊下から聞こえてきた艶めいた声を、江戸の遊びの名残を交えて描いた初期の短編。
あらすじ
雪の降る日、橋場の料理屋「玉川軒」で一中節の順講が開かれる。末座にいるのは、この家の隠居の房さん。若いころは放蕩と遊芸で身代を潰した人だが、今は禿頭をなでながら小さくなっている。それでも三味線に乗った唄を聞くうちに、久しく眠っていた心が少しずつ目覚めてゆく。座を外した房さんの昔を、客たちが噂しているところへ、中洲の大将と小川の旦那が、酒を求めて廊下に出る。すると障子の向こうから、誰かをなだめすかす、房さんらしい色めいた声が聞こえてくる。二人は空想に白粉の匂いを浮かべて中を覗くが、部屋には房さんひとりがいて、炬燵の上の猫に話しかけているばかりだった。二人は黙って引き返し、雪はやむ気配もない。
登場人物
- 房さん 料理屋の隠居。若いころは放蕩と遊芸の人
- 中洲の大将 房さんの昔を知る客
- 小川の旦那 一中節を習う素人の旦那衆の一人
- 宇治紫暁 腰の曲がった一中節の師匠
冒頭部(原文より)
橋場の玉川軒と云う茶式料理屋で、一中節の順講があった。 朝からどんより曇っていたが、午ごろにはとうとう雪になって、あかりがつく時分にはもう、庭の松に張ってある雪よけの縄がたるむほどつもっていた。けれども、硝子戸と障子とで、二重にしめきった部屋の中は、火鉢のほてりで、のぼせるくらいあたたかい。
「老年」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
そして、長い廊下をしのび足で、また座敷へ引きかえした。 雪はやむけしきもない。……
「老年」芥川龍之介(青空文庫)
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