栗山大膳(森鴎外)のあらすじ・登場人物
主君を訴えた老臣
- 歴史
- 文字数
- 17,847字
- 読了目安
- 約36分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 福岡県
- 東京都
- 岩手県
この作品について
寛永九年(1632)、筑前福岡藩の家老栗山大膳が主君の黒田忠之を幕府に訴え出た「黒田騒動」を題材にした歴史小説。発表は雑誌『太陽』。博多で捕らえられた男の懐中の密書という発端から、父祖が黒田家を支えた功績、新参の近習をめぐる主従の確執、幕府の評定へと、史料に拠って時間を遡りながら淡々と筆を進める。鷗外が晩年に力を注いだ史伝的な歴史物の一つ。
あらすじ
寛永九年六月、筑前福岡の城主黒田忠之の見廻役が、博多で怪しい男を捕らえる。男は、家老栗山大膳利章が日田の幕府目附に宛てた、忠之の謀叛を訴える密書を持っていた。同文の書状は二通作られ、一通はすでに江戸へ向かった疑いがある。忠之と利章は、新参の近習倉八十太夫の重用をめぐって対立していた。利章の父利安は黒田官兵衛・長政に仕えた功臣で、関ヶ原の前、長政の母と妻を大坂から脱出させた逸話もある。長政の死後、忠之は老臣を遠ざけて十太夫を引き立て、驕奢と放縦が募った。利章は二十五箇条の諫書を呈したが退けられ、家老を辞して引き籠もる。肥後の加藤家の騒ぎで十太夫が幕府の上使に辱められると、忠之は怒り、利章の邸へ押しかけようとするまでになる。幕府に召された忠之と利章は、江戸で対決した。利章は訴えの理由を多くは語らず、井上道柏ら老臣が、主君に逆意はないと証言する。三月、利章は申し渡しの席で、謀叛の訴えは、自分を成敗しようとする忠之が取り調べを受けないまま領国を召し上げられることを防ぐ策だったと明かし、役人たちは心を動かされる。忠之は筑前を改めて与えられ、利章は盛岡の南部家に預けられて、承応元年に六十二歳で没した。
登場人物
- 栗山大膳利章 黒田家の家老。主君を幕府に訴える
- 黒田忠之 筑前福岡の城主。利章と対立する
- 倉八十太夫 忠之が引き立てた新参の近習。のちに家老に昇る
- 栗山利安 利章の父。黒田官兵衛・長政に仕えた功臣
- 井上道柏 黒田家の老臣。江戸の評定で忠之をかばう
- 小河内蔵允 黒田家の家老。利章と並ぶ三家老の一人
冒頭部(原文より)
寛永九年六月十五日に、筑前國福岡の城主黒田右衞門佐忠之の出した見廻役が、博多辻の堂町で怪しい風體の男を捕へた。それを取り調べると、豐後國日田にゐる徳川家の目附役竹中采女正に宛てた、栗山大膳利章の封書を懷中してゐた。城内でそれを開いて見れば、忠之が叛逆の企をしてゐると云ふ訴であつた。
「栗山大膳」森鴎外(青空文庫)
末尾部(原文より)
利章は承應元年三月一日に六十二歳で亡くなつた。江戸で徳川家光が亡くなつて、家綱が嗣いだ年の翌年である。利章の墓と大きな碑とが、今陸中國巖手群米内村愛宕山法輪院址の山腹に殘つてゐる。妾山内氏の生んだ女子には婿養子が出來て、南部家に仕へた。内山善吉と云ふ二百石取がそれである。栗山の名は人に故主の非を思はせるからと云つて、利章がわざと外戚の苗字を冒させた。利章の家來仙石、財津も南部家に召し出されて、各五十石を受けた。嫡男利周は黒田家の聘を斥けて、處士を以て終つた。
「栗山大膳」森鴎外(青空文庫)
原文を読む
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