虚構の春(太宰治)のあらすじ・登場人物
手紙だけでつづる作家の日々
- 心理
- 文字数
- 54,586字
- 読了目安
- 約1時間49分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1936年(昭和11年)7月、雑誌「文学界」に発表された書簡体の作品。師走上旬から元旦にかけて、太宰治に宛てた手紙・葉書が日付順に並ぶ。出版社の編集者、友人、後輩、読者、故郷の親族など、さまざまな差出人の声から、文壇や出版界との交わり、借金や虚栄にあえぐ作家の姿が浮かび上がる。題のとおり、手紙という形式を借りた虚構として読むことができる。
あらすじ
師走上旬から元旦まで、太宰治に届いた手紙・葉書が、「月日」の見出しの下に日付順に並ぶ。原稿用紙屋の青年は誠実な忠告に感謝し、編集者は掲載の知らせや原稿の催促を寄せ、友人や後輩、見知らぬ読者は、作品への賛辞や批判、弟子入りの願いを書き送る。ひとりの青年が語る、角帯をしめて帝国ホテルに泊まり、女を死なせたという長い告白を、作家が聞き手として受ける対話体の一通もある。やがて借金の申し込みと断りの手紙、病気や薬への心配、故郷の兄や親戚からの勘当と金の相談が増え、太宰の窮状が見えてくる。年が明けると、年賀状の挨拶とともに、出版社から「原稿の依頼をした覚えはない」と突き返す返信が並ぶ。
冒頭部(原文より)
「拝復。お言いつけの原稿用紙五百枚、御入手の趣、小生も安心いたしました。毎度の御引立、あり難く御礼申しあげます。しかも、このたびの御手簡には、小生ごときにまで誠実懇切の御忠告、あまり文壇通をふりまわさぬよう、との御言葉。
「虚構の春」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
元旦 「謹賀新年。」「献春。」「あけましておめでとう。」「賀正。」「頌春献寿。」「献春。」「冠省。ただいま原稿拝受。何かのお間違いでございましょう。当社ではおたのみした記憶これ無く、不取敢、別封にて御返送、お受取願い上ます。『英雄文学』編輯部、R。」「謹賀新春。」「賀正。」「頌春。」「謹賀新年。」「謹賀新年。」「謹賀新年。」「謹賀新年。」「賀春。」「おめでとございます。」「新年のおよろこび申し納めます。」「賀春。」「謹賀新年。」「頌春。」「賀春。」「頌春献寿。」
「虚構の春」太宰治(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。