暗がりの乙松(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
若者を送り出す人情の光
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 11,973字
- 読了目安
- 約24分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
山本周五郎が1936年(昭和11年)、「キング」に発表した人情もの。行き場のない若者・三次に、梅田屋宗兵衛が手をさしのべ、京へのぼって手に職をつけるようにと励ます。暗がりに生きる者へ注がれる、温かな人情の光を描いた一編である。
あらすじ
居合腰でそっと障子を開け、屋内のようすを聞きすましてから廊下へ忍び出る——そんな危うい暮らしをしていた三次。隣の部屋からは、さびのある良い声で「きりぎりす、袖も袂も濡れ縁に」と唄う声が聞こえてくる。暗がりに身を置き、行き場のない若者・三次のもとへ、梅田屋宗兵衛という人物が、温かな手をさしのべる。「さあ行こう、京へのぼって手に職がついたらそう云ってよこすがいい、店を出すくらいの金は都合してあげよう」——宗兵衛の言葉は、温かく力強く、三次の胸へ滲み込んでいく。三次は、無言のまま、万感あふれ出る眼で、じっと宗兵衛の横顔を見つめる。遠くから聞こえる蛙の声——。道を踏み外しかけた若者に注がれる、人の情のあたたかさを描いた、山本の人情ものである。
登場人物
- 三次 行き場のない若者
- 梅田屋宗兵衛 三次に手をさしのべる人物
冒頭部(原文より)
居合腰になってすーと障子を明ける、そのまましばらく屋内のようすを聞きすましてから、そっと廊下へ忍び出た。とたんに、 きりぎりす 袖も袂も濡れ縁に 隣の部屋から、さびた良い声で唄いだすのが聞えてきた。
「暗がりの乙松」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「さあ行こう、京へのぼって手に職がついたらそう云ってよこすがいい、店を出すくらいの金は都合してあげよう」 三次は無言のまま、万感あふれ出る眼で、じっと梅田屋宗兵衛の横顔を覓めた。――遠音の蛙。
「暗がりの乙松」山本周五郎(青空文庫)
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