窓(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
客を待つ窓と向かいの窓
- 心理
- 文字数
- 1,458字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
二階の窓に腰かけて客を待ち続ける「おれ」と、向かいの家の窓に現れる女との交わりを描く掌編。沢木梢(沢木四方吉)への献辞があり、末尾に大正八年二月とある。待つことと、待つことをやめてしまうことのすれ違いを、短い文で淡々と描く。
あらすじ
おれの家の二階の窓は、向かいの家の二階の窓と向き合っている。向こうの窓には鉢植えが並び、黄色い窓掛けが下りていて、主人の姿は見たことがない。おれは古い肱掛椅子に座り、いつか来るかもしれない客を待ってぼんやり往来の人音を聞いているが、誰も訪ねて来ない。あるとき向かいの窓に、私窩子のような混血児の女が現れて会釈をする。長く一人でいたおれは、思わず黙礼を返し、それから毎夕、女と会釈を交わすようになる。いつか客を待つのも懶くなり、女の会釈にだけ答えている。ある朝、手紙が届く。訪ねたが呼び鈴を押しても誰も出なかったので諦めた、という客からの手紙だった。玄関へ下りて見ると、電鈴の針金が途中で切れていた。女を知らずにいれば、待っていた客の一人は来ていたかもしれない。おれは二階へ戻り、窓際の椅子に腰を下ろす。夕方、向かいの窓の女が会釈をしても、もうおれは答えず、前のように寂しく、いつかの客を待っている。
登場人物
- おれ 二階の窓辺で、来るかもしれない客を待ち続ける男
- 向かいの女 向かいの家の窓に現れ、毎夕会釈を送る私窩子のような混血児
冒頭部(原文より)
おれの家の二階の窓は、丁度向うの家の二階の窓と向ひ合ふやうになつてゐる。 向うの家の二階の窓には、百合や薔薇の鉢植が行儀よく幾つも並んでゐる。が、その後には黄いろい窓掛が大抵重さうに下つてゐるから、部屋の中の主人の姿は、未だ一度も見た事がない。
「窓」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
夕方になると、又向うの家の二階の窓には、絹のキモノを着た女が現れて、下品な嬌態をつくりながら、慇懃におれへ会釈をする。が、おれはもうその会釈には答へない。その代り人気のない薄明りの往来を眺めながら、いつかはおれの戸口へ立つかも知れない遠来の客を待つてゐる。前のやうに寂しく。
「窓」芥川龍之介(青空文庫)
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