魔術(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
魔術の条件は欲を捨てること
- 幻想
- 文字数
- 7,214字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 東京都
この作品について
芥川龍之介が児童雑誌『赤い鳥』の1920年(大正9)1月号に発表した、魔術をめぐる童話風の短編。大森に住む印度人ミスラ君から不思議な魔術を教わることになった「私」が語り手で、ミスラ君は魔術を教える条件として「欲を捨てること」を求める。人の心にひそむ欲望を、幻想的な仕掛けと軽やかな語り口で描く。「蜘蛛の糸」「杜子春」と並ぶ、芥川の代表的な童話として親しまれている。
あらすじ
時雨の降る晩、「私」は大森に住む印度人の愛国者マティラム・ミスラ君を訪ねる。ミスラ君はハッサン・カンの秘法を修めた魔術の大家で、ランプの火を宙に躍らせ、机上の書物をひとりでに歩かせるなど、次々と不思議な術を見せてくれる。感嘆した私が魔術を教えてほしいと願うと、ミスラ君は「私の魔術を使うには、まず欲を捨てなければならない」と釘を刺したうえで、術を授ける。ひと月ののち、術を身につけた私は友人たちを集めて腕前を披露する。ところが暖炉の石炭を金貨に変えてみせたところで、友人にそそのかされ、その金貨を賭けてトランプ賭博を始めてしまう。積み上がった大金を目の前にした瞬間、勝ちたい一心で札に手を伸ばす——と、気づけばそこはミスラ君の家で、時計はまだ術を習う前の時刻を指していた。すべては一瞬の幻だったのだ。欲を捨てきれなかった私は魔術を使う資格がなかったのだと、ミスラ君に静かに諭されるのだった。
登場人物
- 私 ミスラ君に魔術を教わるが、金銭欲に負けて術を失う語り手
- マティラム・ミスラ 大森に住む印度人の愛国者。ハッサン・カンの秘法を修めた魔術の大家
冒頭部(原文より)
ある時雨の降る晩のことです。私を乗せた人力車は、何度も大森界隈の険しい坂を上ったり下りたりして、やっと竹藪に囲まれた、小さな西洋館の前に梶棒を下しました。
「魔術」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
「私の魔術を使おうと思ったら、まず欲を捨てなければなりません。あなたはそれだけの修業が出来ていないのです。」ミスラ君は気の毒そうな眼つきをしながら、縁へ赤く花模様を織り出したテエブル掛の上に肘をついて、静にこう私をたしなめました。
「魔術」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
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