アプリで読む

無料・登録不要

満願(太宰治)のあらすじ・登場人物

白いパラソルの女性

  • 心理

太宰治 1938年(昭和13年)9月 「文筆」

文字数
1,506字
読了目安
約3分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 静岡県

この作品について

太宰治が1938年(昭和13年)9月、雑誌『文筆』に発表した、原稿用紙数枚のごく短い掌編。語り手の「私」は、四年前の夏、伊豆の三島に滞在して小説を書いていた折、酔って転んだ怪我がもとで、陽気な町医者と親しくなる。それ以来、医者の家の縁側で毎朝のように見かけるようになった一人の若い女性。その姿をひとつの場面に定着させた、清潔な抒情の作品で、中期の太宰の明るい側面を示す。

あらすじ

四年まえ、「私」は伊豆の三島の知人宅の二階で一夏を過ごし、小説「ロマネスク」を書いていた。ある夜、酔って自転車で転び足を怪我したことから、西郷隆盛に似た陽気な町医者と親しくなり、以来ほとんど毎朝、医者の家の縁側で新聞を読ませてもらうのが習いとなる。その同じ時刻、きまって薬をもらいに来る若い女性がいた。清潔な感じの、簡単服に下駄ばきのその人を、私はいつしか心待ちにするようになる。ある朝、医者の奥さんが私に囁く。「けさ、おゆるしが出たのよ」——胸を病んだ夫のために三年間、医者から夫婦の交わりを禁じられていたその女性が、ついに療養の満願の日を迎えたのだった。私の眼のまえの小道を、白いパラソルをくるくる回しながら、その清潔な姿が飛ぶように歩いていく。年月を経るほどに、私にはあの女性の姿がいっそう美しく思われるのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

これは、いまから、四年まえの話である。私が伊豆の三島の知り合いのうちの二階で一夏を暮し、ロマネスクという小説を書いていたころの話である。或る夜、酔いながら自転車に乗りまちを走って、怪我をした。右足のくるぶしの上のほうを裂いた。

「満願」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

ふと顔をあげると、すぐ眼のまえの小道を、簡単服を着た清潔な姿が、さっさっと飛ぶようにして歩いていった。白いパラソルをくるくるっとまわした。「けさ、おゆるしが出たのよ。」奥さんは、また、囁く。三年、と一口にいっても、――胸が一ぱいになった。年つき経つほど、私には、あの女性の姿が美しく思われる。

「満願」太宰治(青空文庫)

名文

ふと顔をあげると、すぐ眼のまえの小道を、簡単服を着た清潔な姿が、さっさっと飛ぶようにして歩いていった。白いパラソルをくるくるっとまわした。

三年前に胸を病んだ夫の回復のため、医者から辛抱を言い渡されていた若い妻に「おゆるし」が出た朝の姿。原稿用紙数枚の掌編を、白いパラソルの一瞬が鮮やかに締めくくる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品