女神(太宰治)のあらすじ・登場人物
女神の子と名乗る客
- 心理
- 風刺
- 文字数
- 7,046字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
1947年(昭和22年)5月、雑誌「日本小説」に発表された短編。終戦後、津軽から東京に戻った「私」の三鷹の家を、満洲から引き揚げた知人の細田氏が訪ねてきて、自分たちは女神の子の兄弟だと語り出す。語り手が彼を妻のもとへ送り届けるまでの一日を描き、狂気と日常、夫婦のありようを、乾いたユーモアで問う。
あらすじ
宗教家をめぐる騒ぎの少し前、昨年の暮れ、津軽から東京に戻った「私」の三鷹の家に、満洲から引き揚げた細田氏が訪ねてくる。かつておしゃれな詩人だった彼は、軍服姿に丸坊主で、手を洗えと言い、握手や接吻を求め、私と彼は同じ母から生まれた兄弟で、母は彼の妻の姿をした女神だと語る。紙幣に母の笑顔を印刷すればインフレは収まるとも言う。私は彼の発狂を確信し、一緒に立川のアパートへ行って妻に会う。しかし妻は健康で美しく、夫の言動を気にとめず、落ち着いて蜜柑をすすめた。帰宅して妻にこの話をすると、「お前も女神になりたいのか」と聞かれ、妻は「わるくないわ」と笑う。
登場人物
- 私(太宰) 津軽の疎開から東京に戻った作家
- 細田氏 満洲から引き揚げた元詩人。自分を女神の子と思い込む
- 細田夫人 美しく落ち着いた妻。夫を女神の母と呼ばれても動じない
冒頭部(原文より)
れいの、璽光尊とかいうひとの騒ぎの、すこし前に、あれとやや似た事件が、私の身辺に於いても起った。 私は故郷の津軽で、約一年三箇月間、所謂疎開生活をして、そうして昨年の十一月に、また東京へ舞い戻って来て、久し振りで東京のさまざまの知人たちと旧交をあたためる事を得たわけであるが、細田氏の突然の来訪は、その中でも最も印象の深いものであった。
「女神」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「しかし、あの細君は、どういう気持でいるんだろうね。まるで、おれには、わからない。」 「狂ったって、狂わなくたって、同じ様なものですからね。あなたもそうだし、あなたのお仲間も、たいていそうらしいじゃありませんか。禁酒なさったんで、奥さんはかえって喜んでいらっしゃるでしょう。あなたみたいに、ほうぼうの酒場にたいへんな借金までこさえて飲んで廻るよりは、罪が無くっていいじゃないの。お母さんだの、女神だのと言われて、大事にされて。」 私は眉間を割られた気持で、 「お前も女神になりたいのか?」 とたずねた。 家の者は、笑って、 「わるくないわ。」 と言った。
「女神」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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