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百足ちがい(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

あれだよ百足ちがい

  • 風刺
  • 心理

山本周五郎 1950年(昭和25年)8月 「キング」

文字数
28,499字
読了目安
約57分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

江戸の上邸に着任した秋成又四郎は、なぜか行く先々で「あれだ、百足ちがい」と囁かれる。身に覚えのない綽名の由来をたどるうち、五年前のある一件へ行き着く——世間の噂と人の思惑をめぐる、諧謔まじりの一篇。「世間の人たちはせかせかし過ぎる」という和尚の言葉を、又四郎が我が身で納得するまでの顛末が語られる。

あらすじ

江戸の上邸へ着任した秋成又四郎は、その当座かなり迷惑なおもいをさせられた。用もないのにいろいろな人が話しかけ、役部屋にいると覗きに来る者がある。御殿の出仕にも退出にも、歩いていると通りすがりの者が、すれちがいざま同伴者に「あれだあれだ、あれだよ、百足ちがい」と囁くのである——物語はこの居心地の悪さから始まる。……やがて注目は潮が引くように去ってゆく。「みんなはおれを忘れているのかもしれない」と又四郎は思い、母の忠言に従って親類や権威筋へ顔出しに努めるが、収穫といえば松家おかね嬢を知ったことくらいしかない。「あらちょっと、ちょっとお待ちになって」と呼びとめる嬢の押しの強さも、彼を戸惑わせるばかりである。綽名の由来を確かめるため、又四郎は五年前の一件にかかわる苅賀由平二を訪ねる。組屋敷の中に厩や長屋や三棟の土蔵を擁する堂々たる構えの家で、由平二はまるでどこかの家主のように反りかえり、「多忙であるからして、むだな挨拶はぬき、簡単に用を云って貰おう」と繰り返す。「用は簡単なんだ、五年まえのことを思いだして貰えばいい」——そこから事の真相が解けてゆく。結び、又四郎は和尚に語る。世間の人たちはせかせかし過ぎる、眼のさきの事でじたばたし過ぎるから却って肝心のものを掴みそこねるらしい、と。そして松家邸の客間の賑わしい光景を思い浮かべ、ぞっとして片手を振るのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  江戸の上邸へ着任した秋成又四郎は、その当座かなり迷惑なおもいをさせられた。  用もないのにいろいろな人が話しかける。役部屋にいると覗きに来る者がある。御殿の出仕にも退出にも、歩いていると通りすがりの者が、すれちがいざま同伴者に、 「あれだあれだ、あれだよ、百足ちがい」

「百足ちがい」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 又四郎の眼にはふと松家邸の客間の、あの賑わしい光景が思いうかんだ。彼はぞっとして、それから片方の手を振っていった。 「いやとんでもない、とんでもない、私はやっぱり、この点でも、参つなぎに待って、うう、いいことをしたと思いますよ」

「百足ちがい」山本周五郎(青空文庫)

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