無毛談――横山泰三にさゝぐ――(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
ハゲをめぐる人情噺
- 風刺
- 文字数
- 8,319字
- 読了目安
- 約17分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1948年5月『オール読物』に載った、漫画家の横山泰三にささげられた軽妙な一編。若ハゲをめぐる作者自身の体験から、酔って連れ帰った横山兄弟の話、かつて家にいた女中の話へと移る。髪の薄さに悩む人間の見栄とおかしみを、私生活を材料に語る。
あらすじ
寝具が二人分しかない作者の家に、酔って漫画家の横山隆一・泰三兄弟を連れ帰ると、兄弟はベレー帽を取らずに寝る。そこから話は髪の薄さへ移り、作者は三十四、五で大井広介に頭を指摘されて怒ったことや、「ハゲましたネ」と言われるたびの応対の惨めさ、年を重ねて誰も言わなくなったことを語る。続いて昔、家にいた女中トン子の話になる。上野駅へ日の丸を目印に着いた無口で陰気な娘は、世間知らずの妹には気に入られたが、作者が郵便を取りに出ると必死に先回りし、風呂にも鍵をかけるなど不審な行動を重ねる。作者が五十日の旅行から戻ると、トン子は暇を出されていた。妹は、トン子が新聞広告で毛はえ薬を取り寄せていたことを知り、これまでの不可解な振る舞いの理由が分かる。
登場人物
- 私 作者自身。若くして髪が薄くなった
- 横山隆一・泰三 漫画家の兄弟
- トン子 昔、家にいた無口な女中
- 妹 トン子を可愛がる世間知らずの家庭婦人
冒頭部(原文より)
私のところには二人ねるだけのフトンしかないのである。だから、お客様を一人しかとめられない。 先日、酔っ払って、このことを忘れて、横山隆一、泰三の御兄弟を深夜の拙宅へ案内した。
「無毛談――横山泰三にさゝぐ――」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
おトンちゃんへの悪感情を私は一度に失っていた。 私の頭がハゲていると分ってのちのサンタンたる思いのうちで、私は時々おトンちゃんのシャクレ顔を思いだしたものである。これは男の若ハゲなどゝは比較を絶する悲痛な呪いであったろう。
「無毛談――横山泰三にさゝぐ――」坂口安吾(青空文庫)
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