年末の一日(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
漱石の墓を探した年の暮
- 心理
- 文字数
- 2,979字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
新年号の仕事を終えた「僕」が、新聞記者のK君と夏目漱石の墓参りをした、年の暮れの一日を綴る身辺小説。「新潮」の新年号に載った。
あらすじ
新年号の仕事を終えて寝床を離れた「僕」は、昼過ぎに訪れた新聞記者のK君に誘われ、雑司ヶ谷にある夏目先生の墓へ出かける。電車の中では、電球が落ちて割れる出来事に居合わせる。墓地に着いたものの、墓がなかなか見つからず、僕はいら立ちと侘しさを覚える。墓掃除の女に道を聞いて、やっと墓の前へたどり着く。僕は帰りの電車でK君と別れ、夕暮れの動坂で、坂を上る箱車を見て、後ろから押してやる。
登場人物
- 僕 新年号の仕事を終えた作家
- K君 新聞記者
冒頭部(原文より)
………僕は何でも雑木の生えた、寂しい崖の上を歩いて行った。崖の下はすぐに沼になっていた。その又沼の岸寄りには水鳥が二羽泳いでいた。どちらも薄い苔の生えた石の色に近い水鳥だった。僕は格別その水鳥に珍しい感じは持たなかった。が、余り翼などの鮮かに見えるのは無気味だった。――
「年末の一日」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
すると墓地裏の八幡坂の下に箱車を引いた男が一人、楫棒に手をかけて休んでいた。箱車はちょっと眺めた所、肉屋の車に近いものだった。が、側へ寄って見ると、横に広いあと口に東京胞衣会社と書いたものだった。僕は後から声をかけた後、ぐんぐんその車を押してやった。それは多少押してやるのに穢い気もしたのに違いなかった。しかし力を出すだけでも助かる気もしたのに違いなかった。 北風は長い坂の上から時々まっ直に吹き下ろして来た。墓地の樹木もその度にさあっと葉の落ちた梢を鳴らした。僕はこう言う薄暗がりの中に妙な興奮を感じながら、まるで僕自身と闘うように一心に箱車を押しつづけて行った。………
「年末の一日」芥川龍之介(青空文庫)
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