能面の秘密(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
盲目のあんまが聞いた声
- ミステリ
- 文字数
- 17,401字
- 読了目安
- 約35分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1955年(昭和30年)2月、「小説新潮」に発表された坂口安吾の推理小説。熱海の旧家の別館で起きた焼死事件を、盲目のあんま、新聞記者、元奇術師の旅館主人が追う。安吾は戦後、「不連続殺人事件」をはじめ犯人当ての長編を書いたが、本作はその系列に連なる短編で、探偵小説を愛読する登場人物が事件を語り合う趣向をもつ。音と声、鍵をめぐる実験が見どころ。亡くなった1955年の発表作。
あらすじ
熱海の旧家、乃田家の別館が焼け、客の大川が密室で焼死体となって見つかった。あんまのオツネは前夜、大川に鬼女の能面をかぶらされてもんだあと、夫人が窓の外の男をゆすりだとして拒絶する声を聞いていた。何気なくそれを話したことから、新聞記者の辻が事件を殺人と見て記事にする。夫人は否定し、息子の浩之介、庭番の爺や、大川の仲間の今井が疑われるが、決め手がない。小僧が、庭番が夜中に夫人の窓を叩いて二百万円を受け取るのを見たと辻に告げる。庭番は退職手当だと言い張る。そこへ旅館主人の伊勢崎九太夫が現れ、音の実験でオツネが聞いた男の声が、声色の上手な夫人の作り声だったことを示す。九太夫は、記事の中の鬼女の面の話から庭番が夫人をゆする材料を得たと推理する。夫人は鬼女の面をかぶって大川を殺し、持ち帰ったと見られた。証拠は残らないが、九太夫は天罰が下ると予言する。まもなく浩之介が金を持ち逃げし、夫人は残りの財産を株で失い、首をくくって死んだ。
登場人物
- オツネ 熱海のあんま。目が見えず、乃田家に出入りする
- 辻 新聞の熱海支社に勤める記者
- 伊勢崎九太夫 旅館の主人。元奇術師で、探偵眼にすぐれる
- 乃田夫人 旧家の未亡人。ゆすりを受けているらしい
- 浩之介 夫人の息子。足が不自由で、高利貸しをしている
- 今井 焼死した大川と親しかった男
冒頭部(原文より)
オツネはメクラのアンマだ。チビで不美人だが朗らかな気質でお喋り好きでアンマの腕も確かだから旅館なぞもヒイキにしてくれる。その日は朝のうちから予約があってかねてこれもオトクイの乃田家から夜の九時ごろ来るようにと話があった。 乃田家へよばれるのは奥さまの御用の時とお客さまの御用の時があって、お客さまは大川さんの場合が多い。
「能面の秘密」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
この予言は実に近いうちに実現したのである。浩之介が有金さらって逃げたのである。これを警察へ訴えでれば大川殺しの真相をあばいてやるという置き手紙があった。浩之介は家の内情について明るいし、探偵小説にもくわしいから、九太夫と同じ推理に達することができた。二百万円に代えられたものが能面であることも悟ったのである。 奥さんはヤケを起して残りの全財産を短日月で株に使い果してしまい、クビをくくって死んでしまった。
「能面の秘密」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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