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おしの(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

南蛮寺に来た武家の母

  • 歴史

芥川龍之介 1923年(大正12年)4月 「中央公論」

文字数
4,140字
読了目安
約8分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

南蛮寺を訪れた武家の後家と、紅毛人の神父の一場の対面を描くキリシタンもの。子の病を治してほしいと頼む母と、教えを説こうとする神父の思いは、堂内の薄暗さのなかで少しずつ食い違ってゆく。短い会話劇で、信仰と母の気持ちを対比した掌編。

あらすじ

梅雨曇りの南蛮寺に、武家の後家しのが訪れ、十五歳になる息子新之丞の重い病を、神父の医術で治してほしいと頼む。神父は快く引き受けるが、しのが観世音菩薩に縋ると口にしたため、偶像を拝むなと諭し、基督の生涯を熱をこめて語り始める。ところが、十字架上の基督が「わが神、わが神、何ぞ我を捨て給うや」と叫んだ場面に至ると、しのの眼には、軽蔑と憎悪が宿る。しのの夫、一番ヶ瀬半兵衛は、博奕に負けて鎧を奪われても、紙の羽織で敵陣に斬りこんだ武士だった。そのような夫と比べ、声を上げて恨みごとを言う臆病者の流れを汲む者に息子は診せられないと言い放ち、しのは涙をのんで堂を去ってゆく。

登場人物

冒頭部(原文より)

 ここは南蛮寺の堂内である。ふだんならばまだ硝子画の窓に日の光の当っている時分であろう。が、今日は梅雨曇りだけに、日の暮の暗さと変りはない。その中にただゴティック風の柱がぼんやり木の肌を光らせながら、高だかとレクトリウムを守っている。それからずっと堂の奥に常燈明の油火が一つ、龕の中に佇んだ聖者の像を照らしている。

「おしの」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

 女は涙を呑みながら、くるりと神父に背を向けたと思うと、毒風を避ける人のようにさっさと堂外へ去ってしまった。瞠目した神父を残したまま。………

「おしの」芥川龍之介(青空文庫)

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