蘿洞先生(谷崎潤一郎)のあらすじ・登場人物
生垣から覗いた先生の秘密
- 心理
- 風刺
- 文字数
- 7,573字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
訪問記者の目を通して奇人学者を描いた短編。1925年(大正14年)4月、雑誌「改造」に発表された。「学界名士訪問録」の種を取りに来たA雑誌の記者は、長く待たされた末に現れた蘿洞先生の異様な応対に面くらう。要領を得ない受け答えに業を煮やした記者が、帰りぎわに生垣から裏庭を覗いたとき、そこには思いもよらぬ光景があった。谷崎らしい嗜虐と被虐の主題を、軽妙な筆致で扱っている。
あらすじ
A雑誌の訪問記者は、連載中の「学界名士訪問録」の種を取りに、東京郊外の蘿洞先生の邸を訪ねた。だが一時間以上待たされ、書生の口上は「まだお眼覚めになりませんから」。ようやく現れた四十五六の先生は、長く西洋にいた人らしい趣味のよい応接間には似合わぬ、むくんだ土気色の顔をして、質問に対しても物を半分しか答えない。低く神経質に顫える声、瞳をどこか遠くへ据える癖。日常生活について尋ねても、過激思想や普通選挙の話を向けても、ただ呻るばかりである。業腹な思いで邸を出た記者は、未練に生垣の外を廻って裏庭を覗いた。そこには小女と先生の姿があった。
登場人物
- 蘿洞先生 東京郊外に独りで住む学者。訪問記者に要領を得ない応対をする
- A雑誌の訪問記者 「学界名士訪問録」の種を取りに来た男
- 小女 先生の家の女中。裏庭で意外な役割を演じる
冒頭部(原文より)
A雑誌の訪問記者は、蘿洞先生に面会するのは今日が始めてなのである。それで内々好奇心を抱いて、もうさっきから一時間以上も待っているのだが、なか/\先生は姿を見せない。取次に出た書生の口上では「まだお眼覚めになりませんから」と云うことだった。寝坊な人だとは記者もかね/″\聞いていたから、その積りで来たのだけれど、何ぼ何でも既に十二時半である。
「蘿洞先生」谷崎潤一郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
間もなく小女は、なお先生の胴体の上に腰かけたまゝ、小さな一本の籐の笞を取り上げ、片手で先生の髪の毛を掴み、片手で先生の太った臀をぴし/\と打った。すると先生はその時始めて、少しばかり生き/\とした眼つきをして「ウー」と呻ったようであった。―――此の光景を物の半時間も覗いていた記者は、変な気がして、コソコソ逃げるように裏庭を出た。
「蘿洞先生」谷崎潤一郎(青空文庫)
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