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ろまん灯籠(太宰治)のあらすじ・登場人物

兄妹五人が継ぐラプンツェル

  • 家族
  • 幻想

太宰治 1940年(昭和15年)12月 「婦人画報」

文字数
37,222字
読了目安
約1時間14分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

太宰治が1940(昭和15)年12月から翌年6月にかけて『婦人画報』に連載した作品。亡き洋画家の遺族である入江家の兄妹五人が、正月の五日間、一日ずつ順に書き継いで、グリム童話のラプンツェルを下敷きにした物語を連作していく。書き手ごとに異なる文体と口癖、家族のやりとりが、童話そのものと並んで読みどころになっている。

あらすじ

亡くなった洋画の大家・入江新之助の遺家族を、語り手は以前から好み、その兄妹五人を描いた短篇小説を書いたことがある。法学士の長兄、鉄道省に勤める長女、病弱で毒舌の次男、小柄で自惚れの強い次女、一高に入ったばかりの末弟。祖父も祖母も母も、みなロマンスを好む風変わりな一家である。お正月の五日間、兄妹は物語を一日ずつ書き継ぐ遊戯を始める。一日目、末弟は、魔法使いの婆さんの娘ラプンツェルが、森に迷い込んだ王子を救い、四年後に塔から髪の綱で降りて再会するところまでを、童話集から盗んで書く。見かねた祖母の勧めで、「けれども、これから不仕合せが続きます」と結ぶ。二日目、長女は、ラプンツェルがお城で身分の違いに苦しみ、子を産みたくないと王子に訴えるところまで書く。三日目、風邪で寝込んだ次男は、母に口述筆記させ、産後に衰弱したラプンツェルの前へ魔法使いの老婆が現れ、醜い顔になっても生かすのかと王子に問う場面を書く。四日目に次女が理屈っぽく書きつなぎ、老婆はラプンツェルを大釜に投げ込む魔法を行う。五日目の長兄は、気高い女王のような顔で蘇ったラプンツェルを描き、結婚は幾度も結び直すものだと説いて締める。完成した物語を客間で読み上げると、酔った祖父は王さまと王妃さまのことが書かれていないと文句をつけるが、祖母に叱られる。

登場人物

冒頭部(原文より)

八年まえに亡くなった、あの有名な洋画の大家、入江新之助氏の遺家族は皆すこし変っているようである。いや、変調子というのではなく、案外そのような暮しかたのほうが正しいので、かえって私ども一般の家庭のほうこそ変調子になっているのかも知れないが、とにかく、入江の家の空気は、普通の家のそれとは少し違っているようである。この家庭の空気から暗示を得て、私は、よほど前に一つの短篇小説を創ってみた事がある。私は不流行の作家なので、創った作品を、すぐに雑誌に載せてもらう事も出来ず、その短篇小説も永い間、私の机の引き出しの底にしまわれたままであったのである。その他にも、私には三つ、四つ、そういう未発表のままの、謂わば筐底深く秘めたる作品があったので、おととしの早春、それらを一纏めにして、いきなり単行本として出版したのである。

「ろまん灯籠」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

「一ばん出来のよかった人に、おじいさんが勲章を授与なさるそうですよ。」と母は、子供たちに笑いながら教えた。母は、祖父にそんな事で元気を恢復させてあげたかったのである。けれども祖父は、へんに真面目な顔になってしまって、 「いや、これは、やっぱり、みよ(母の名)にあげよう。永久に、あげましょう。孫たちを、よろしくたのみますよ。」と言った。  子供たちは、何だか感動した。実に立派な勲章のように思われた。

「ろまん灯籠」太宰治(青空文庫)

名文

八年まえに亡くなった、あの有名な洋画の大家、入江新之助氏の遺家族は皆すこし変っているようである。

太宰『ろまん燈籠』の書き出し。物語の連作を楽しむ入江家の兄妹たちを紹介する、軽やかな語りが始まる。

――兄妹、五人あって、みんなロマンスが好きだった。

作中で入江家の兄妹を描いた短篇の書き出し。退屈すると皆で物語を書き継ぐ一家の気風を、一文で言い表している。

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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