十月の末(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
霜の朝の豆畑の子ら
- 家族
- 幻想
- 文字数
- 4,788字
- 読了目安
- 約10分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
農家の子・嘉ッコと隣家の善コの、秋の終わりの一日を描く短編。霜の降りた朝の豆畑、耳をふさぐと聞こえる水の流れのような音を大人に尋ねてまわる場面、赤ひげの西洋人の旅人との出会い、夜のいろりばたを襲う雹と、日常の小さな出来事が方言まじりの会話で積み重ねられる。おばあさんの「天の邪鬼の小便」のような返事など、子どもと大人のやりとりの可笑しみと、豆の木を兵隊に見立てるような比喩の新鮮さが読みどころ。
あらすじ
霜の降りた朝、嘉ッコは母とおばあさんに続いて山の畑へ豆を抜きに行く。垣根の柳ではみそさざいが鳴き、街道では電信柱が唸っている。豆畑で隣の善コとその母に出会った嘉ッコは、両手で耳をふさいだりあけたりすると聞こえる、水の流れるような音の正体を二人で尋ねる。母は西根山の滝の音だと言い、おばあさんは「天の邪鬼の小便の音」だと澄まして答えるので、二人は笑い転げる。そこへ鼠色の服の背の高い男が来る。兵隊かと思って呼びかけると赤ひげの西洋人で、英語で怒鳴られて二人は一目散に逃げるが、男は笑って帽子をとって去っていく。酔っぱらいの爺さまを取り換えようと軽口をたたいた嘉ッコは、当の爺さまに耳をひっぱられて謝る。夜、いろりを囲むと、学校へ通う兄が読本の文句を読み、爺さまがそれを笑って兄が怒り、猫を取り合ううちに、家がゆれるほどの音とともに雹が降りだす。やがて音がやみ、外に出ると空は拭いたように澄んで七日の月がかかり、地面には氷砂糖をまいたように雹が光っている。稲光の下で、嘉ッコは西の山々が月光に青く横たわるのを指さす。
登場人物
- 嘉ッコ 農家の男の子
- 善コ 隣家の男の子
- 嘉ッコの母・おばあさん・爺さま 豆畑で働く家族
- 嘉ッコの兄 学校へ通う兄
- 赤ひげの旅人 畑のそばを通る西洋人
冒頭部(原文より)
嘉ッコは、小さなわらじをはいて、赤いげんこを二つ顔の前にそろえて、ふっふっと息をふきかけながら、土間から外へ飛び出しました。外はつめたくて明るくて、そしてしんとしています。
「十月の末」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「ホーォ。」善コの声がします。 「ホーォ。」嘉ッコと嘉ッコの兄さんとは一所に叫びながら垣根の柳の木の下まで出て行きました。となりの垣根からも小さな黒い影がプイッと出てこっちへやって参ります。善コです。嘉ッコは走りました。 「ほお、雹だじゃぃ。大きじゃぃ。こったに大きじゃぃ。」 善コも一杯つかんでいました。 「俺家のなもこの位あるじゃぃ。」 稲ずまが又白く光って通り過ぎました。 「あ、山山のへっぴり伯父。」嘉ッコがいきなり西を指さしました。西根の山山のへっぴり伯父は月光に青く光って長々とからだを横たえました。
「十月の末」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。