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浜菊(伊藤左千夫)のあらすじ・登場人物

夜の駅に降り立った旅人

  • 心理

伊藤左千夫 1908年(明治41年)9月 「ホトトギス」

文字数
10,318字
読了目安
約21分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 新潟県

この作品について

伊藤左千夫が、友人の家を訪ねた体験をもとに書いたとみられる短篇。夜の柏崎に降り立った「予」が、学生時代の旧友の家で、その家の人々との気まずい関係に巻き込まれる。男女と友人関係の微妙な心理を、写生文の落ち着いた筆で描いている。

あらすじ

九時二十分、汽車が止まり、予は柏崎の駅に降りる。改札を出ると、夜は意外に暗く、一緒に降りた客たちはたちまち闇に消えてしまう。軒灯の鈍く光る薄暗い停車場に残された予に、車屋が細い声で呼びかける。予は旧友を訪ねるつもりで来たのだが、そこで待っていたのは、友人の岡村との複雑なやりとり、お繁さんという女性をめぐる微妙な空気であった。最後に、翌朝の駅を離れた予は、ほとんど獄屋を免れ出たような感じがし、友の仕向けにはわからない所があったと省みる。末尾には明治四十一年九月とある。

冒頭部(原文より)

 汽車がとまる。瓦斯燈に「かしはざき」と書いた仮名文字が読める。予は下車の用意を急ぐ。三四人の駅夫が駅の名を呼ぶでもなく、只歩いて通る。靴の音トツトツと只歩いて通る。乗客は各自に車扉を開いて降りる。  日和下駄カラカラと予の先きに三人の女客が歩き出した。男らしい客が四五人又後から出た。一寸時計を見ると九時二十分になる。改札口を出るまでは躊躇せず急いで出たが、夜は意外に暗い。パッタリと闇夜に突当って予は直ぐには行くべき道に践み出しかねた。

「浜菊」伊藤左千夫(青空文庫)

末尾部(原文より)

 予は柏崎停車場を離れて、殆ど獄屋を免れ出た感じがした。岡村が予に対した仕向けは、解ってるようで又頗る解らぬ所もある。恋は盲目だという諺もあるが、お繁さんに於ける予に恋の意味はない筈なれども、幾分盲目的のところがあったものか、とにかく学生時代の友人をいつまで旧友と信じて、漫に訪問するなどは警戒すべきであろう。聞けば渋川も一寸の事ではあるが大いに不快であったとのことである。 (明治四十一年九月)

「浜菊」伊藤左千夫(青空文庫)

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