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隣の嫁(伊藤左千夫)のあらすじ・登場人物

隣に嫁いだ人への、許されぬ思い

  • 恋愛
  • 心理

伊藤左千夫 1908年(明治41年)2月 「ホトトギス」

文字数
23,267字
読了目安
約47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 千葉県

この作品について

1908年(明治41年)「ホトトギス」に発表された伊藤左千夫の小説。「野菊の墓」に続く農村恋愛小説で、隣家へ嫁いできた若妻・おとよさんと、婿養子に出る身の青年・省作との、許されぬ思いを描く。房総の農村の生活と季節が写生の筆で克明にとらえられ、そのなかで、家と道徳に縛られて添えぬ二人の哀しみが浮かび上がる。「道徳は人間を絞め殺す道具だ」という一節に、封建的な家制度への静かな抗議がこめられている。

あらすじ

朝寝を姉にどなられて起きる省作の家に、隣家へ若い嫁が来た。おとよさんという。畑仕事や近所づきあいのなかで顔を合わせるうち、省作とおとよさんは互いに心を通わせるようになる。素直で情の深いおとよさんは、嫁ぎ先での気づまりな暮らしのなかで、省作の若い誠実さに救われるものを感じ、省作もまた、隣の嫁への思いが日ごとに募っていくのを止められない。だが省作には養家へ入る話が進んでおり、おとよさんは人妻である。田植え、麦刈り、祭り——農事の巡りとともに、二人の思いは深まるほどに行き場を失っていく。ついに互いの心の底を打ち明けあった二人は、しかしままならぬ世のならいに背くことができない。結婚せねばならぬという理屈で人為的に引き寄せられ、機械のようになっていなければならぬのが道徳なら、道徳は人間を絞め殺す道具だ——そう嘆きながら、二人は涙の縄を結び合わせる約束を交わす。その二日後、おとよさんは里へ帰り、ついに隣へは戻らなかった。省作の養子縁組もまた、噂のために破談となった。

登場人物

冒頭部(原文より)

     一 「満蔵満蔵、省作省作、そとはまっぴかりだよ。さあさあ起きるだ起きるだ。向こうや隣でや、もう一仕事したころだわ。こん天気のえいのん朝寝していてどうするだい。省作省作、さあさあ」  表座敷の雨戸をがらがらあけながら、例のむずかしやの姉がどなるのである。

「隣の嫁」伊藤左千夫(青空文庫)

末尾部(原文より)

 二人は互いに手をとって涙の糸をより合わせ、これからさき神の恵みに救われるような事があったらば、互いに持った涙の繩を結び合わせようと約束した。  この事あった翌々日、おとよさんは里へ帰ってしもうた。そうしてついに隣へ帰って来なかった。省作もいったん養家へいったけれど、おとよさんとのうわさが立ったためかついに破縁になった。

「隣の嫁」伊藤左千夫(青空文庫)

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