守の家(伊藤左千夫)のあらすじ・登場人物
四つの年の暮れの記憶
- 家族
- 文字数
- 3,569字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
伊藤左千夫が、幼い日の記憶をもとに書いた短篇。四つの年の暮れ、姉に可愛がられた思い出と、守り役のお松との別れが、子どもの感覚そのままの調子で語られる。のちに聞いたお松の不幸な行く末が、末尾に静かに添えられる。
あらすじ
自分が四つの年の暮れのことは、あとで母や姉から聞いて覚えた記憶らしい。煤掃きも餅搗きも終わって家が広々と綺麗になり、気持ちが浮き立つ。姉は「もう三つ寝ると正月だよ、正月が来ると坊やは五つになるのよ」と唄うように言って、自分を喜ばせる。姉は二十二、三歳で、色が大変白く、まだ子がなく自分を大変可愛がってくれた。その後ろには襷を掛けた守りのお松が立っている。やがて別れの時が来て、お松は去る。七、八年ののち、お松は船方の妻になったが、夫が酒飲みで乱暴なため、憂鬱性の狂いになって死んだという話を聞いたと結ばれる。
冒頭部(原文より)
実際は自分が何歳の時の事であったか、自分でそれを覚えて居たのではなかった。自分が四つの年の暮であったということは、後に母や姉から聞いての記憶であるらしい。 煤掃きも済み餅搗きも終えて、家の中も庭のまわりも広々と綺麗になったのが、気も浮立つ程嬉しかった。
「守の家」伊藤左千夫(青空文庫)
末尾部(原文より)
それきり妙に行違って、自分はお松に逢わなかった。それでも色のさえない元気のない面長なお松の顔は深く自分の頭に刻まれた。 七八年過ぎてから人の話に聞けば、お松は浜の船方の妻になったが、夫が酒呑で乱暴で、お松はその為に憂鬱性の狂いになって間もなく死んだという事であった。 (明治四十五年二月)
「守の家」伊藤左千夫(青空文庫)
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