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式部小路(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

お夏と愛吉のその後

  • 恋愛
  • 心理

泉鏡花 1906年(明治39年)1月 「大阪毎日新聞」

文字数
74,781字
読了目安
約2時間30分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1906年(明治39年)1月1日から27日まで『大阪毎日新聞』に連載された新聞小説。青空文庫の注記によれば、先に書かれた『三枚続』(1900年)の続きの物語である。三年が経ち、人形町の床屋の職人・愛吉と、深川の没落した令嬢お夏の関係は、小石川の「式部小路」と呼ばれる一画を舞台に新しい局面を迎える。前作を読んでいなくても人物関係は追えるが、続けて読むと愛吉の純情が一層際立つ。正月の連載らしく、長い会話と語りが物語を押し進める。

あらすじ

『三枚続』から三年。人形町を離れたお夏は、小石川の「式部小路」の一軒に身を寄せ、築地の医学士・山の井光起がその暮らしを支えている。火事で大店を失った令嬢という過去を持つお夏は、病や心労を抱えながらも気丈に暮らす。かつての子分・愛吉は、三年のあいだお夏に会えずにいたが、風説を頼りにその家を探し当てて再会する。山の井、愛吉、お夏の周りには、新聞の探訪員や山の井の薬剤師らも関わり、お夏への愛情と義理が錯綜する。やがてお夏は何者かに刃物で襲われ、病院へ運ばれる。山の井らが見守る病室で、雨の暁、お夏は静かに息を引き取る。

登場人物

冒頭部(原文より)

 鳥差が通る。馬士が通る。ちとばかり前に、近頃は余り江戸向では見掛けない、よかよか飴屋が、衝と足早に行き過ぎた。そのあとへ、学校がえりの女学生が一人、これは雑司ヶ谷の方から来て、巣鴨。  こう、途絶え途絶え、ちらほらこの処を往来う姿は、あたかも様々の形した、切れ切れの雲が、動いて、その面を渡るに斉しい。秋も半ば過ぎの、日もやつ下りの俤橋は、小石川の落葉の中に、月が懸かった風情である。

「式部小路」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 丹平は、そこに掲げられた、体温の表を見て、烈しい地震系を描いた、噴火山のようなものだと思った。  あわれ、その胸にかけたる繃帯は、ほぐれて靉靆いて、一朶の細き霞の布、暁方の雨上りに、疵はいえていたお夏と放れて、眠れるごとき姿を残して、揺曳して、空に消えた。  内裏雛の冠して、官女たちと、五人囃子して遊ぶ状を、後に看護婦までも、幻に見たと聞く。

「式部小路」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

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