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西郷隆盛(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

西郷は生きていると老紳士

  • 歴史
  • 風刺

芥川龍之介 1918年(大正7年)1月 「新小説」

文字数
10,893字
読了目安
約22分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

維新史を専攻した本間さんから聞いた話として語られる、夜行列車の食堂車での問答。酔った老紳士が「西郷隆盛は城山で死ななかった」と言い張り、青年は史料を挙げて反論する。歴史の「事実」とは何かを、一種の悪戯を通して問う短編。

あらすじ

「僕」は、維新史を研究する本間さんから聞いた話を書き留める。学生時代の本間さんは、春休みに京都から帰る雨の夜行列車の食堂車で、鼻眼鏡をかけた酔った老紳士に話しかけられる。老紳士は、西南戦争の史料には誤伝が多く、西郷隆盛は城山で死なず、今この汽車に乗っていると言い出す。本間さんが史料を挙げて反論すると、老紳士は、その史料の正確さこそ疑わしいと一蹴し、一等室へ連れてゆく。そこには、確かに西郷そっくりの肥った老人が居眠りをしていた。老紳士は大声で笑い、あれは自分の友人の医者だと明かす。差し出された名刺を見て、本間さんは相手の素性に気づく。老紳士は、自分は懐疑主義者で、嘘のない歴史ではなく、ありそうな美しい歴史が書ければ満足だと言う。

登場人物

冒頭部(原文より)

 これは自分より二三年前に、大学の史学科を卒業した本間さんの話である。本間さんが維新史に関する、二三興味ある論文の著者だと云う事は、知っている人も多いであろう。僕は昨年の冬鎌倉へ転居する、丁度一週間ばかり前に、本間さんと一しょに飯を食いに行って、偶然この話を聞いた。

「西郷隆盛」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

ただいかにもありそうな、美しい歴史さえ書ければ、それで満足する。僕は若い時に、小説家になろうと思った事があった。なったらやっぱり、そう云う小説を書いていたでしょう。あるいはその方が今よりよかったかも知れない。とにかく僕はスケプティックで沢山だ。君はそう思わないですか。」

「西郷隆盛」芥川龍之介(青空文庫)

名文

だから、僕は歴史を書くにしても、嘘のない歴史なぞを書こうとは思わない。ただいかにもありそうな、美しい歴史さえ書ければ、それで満足する。

汽車で本間さんと語り合う老紳士の言葉。史料の確かさを疑い、「美しい歴史」を求めると言い切る、作品の歴史観の核心。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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