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左近の怒り(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

漁師が汚職の金庫に挑む

  • ミステリ
  • 冒険

坂口安吾 1954年(昭和29年)7月 「講談倶楽部」

文字数
47,469字
読了目安
約1時間35分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

元密輸船乗りの若い漁師・夏川左近が、上京先の小さな出版社で、政界・財界の汚職を暴く手記「バクダン・メモ」の出版に巻き込まれる長編の娯楽読み物。謎の美女、銀座のキャバレー、金庫爆破の依頼と、事件がつぎつぎに連なるなか、海の男の目から見た「東京という海」の複雑さがユーモラスに描かれる。初出は「講談倶楽部」1954(昭和29)年7月号〜9月号。

あらすじ

終戦後の数年間、密輸船に乗っていた漁師の夏川左近は、上京のついでに、以前原稿を送った大竜出版社を訪ねる。社長の吉野大竜に口説かれて社員になった左近は、政界官界財界の裏面を暴露する手記「バクダン・メモ」の出版を手伝うことになる。印刷所の帰り道、左近は見知らぬ美女に腕をとられ、友だちのフリを頼まれて邸へ入りこむ。追手が踏みこんでくると、女の姿は消えていた。邸の主「神奈川」と名乗る男は、女賊が盗んだ秘密の品を、金庫を爆破してでも盗み返せと左近に命じる。出版社の事務員・西江葉子と少年タコスケは、問題の「白雲荘」を探るうちに、美女が愛妾芸者の玉子ではないかと気づく。葉子は緑色の高級車で連れ去られ、住田嘉久馬の隠れ家で玉子の急病を看病することになる。玉子は看病する葉子に、左近が爆破するはずだった金庫は「バクダン・メモ」の著者・住田嘉久馬の邸にあり、帰り道で十数頭の猛犬に噛み殺される手筈だったと打ち明ける。一億五千万円の取引の裏で、左近は汚職のからくりの生贄にされかけていたのだった。葉子が戻ると、左近は怒りを隠したまま住田邸へ単身乗りこみ、犬の関所を無関心で通りぬける。玉子は左近を信じて金庫を開け、左近は住田を縛りあげて書類を持ち出し、太平洋新聞へ届ける。玉子は「今から人間になる」と呟いて、いずこともなく姿を消した。

登場人物

冒頭部(原文より)

 夏川左近は久方ぶりで上京のついで古本あさりに神田へでた。そのときふと思いだしたのは大竜出版社のことだ。終戦後の数年間、左近は密輸船に乗りこんでいた。荒天つづきのつれづれに、そのころの記録をつづり「密輸船」という題をつけて大竜出版社へ送ったままになっている。かれこれ一年ぐらい前のことである。むろん原稿を送りこんでいきなり本にしてもらえると思ってもいないが、ちょうど神田へでたついでだから冷やかし半分に大竜出版社を訪ねる気持になったのである。

「左近の怒り」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

「ありがとうは、私が左近さんに云わなければならない言葉だったわ。私も今からは人間になったのだ。左近さん。ありがとう」  そして左近が太平洋新聞の応接室で社会部長や次長らにかこまれて秘密書類奪取のイキサツを語っているころ、玉子は緑の自動車ではないタクシーをよんで、いずこともなく姿を消し去るところであった。  今から人間になるために。

「左近の怒り」坂口安吾(青空文庫)

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