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天空の魔人(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

雲間にのびる巨人の腕

  • ミステリ
  • 冒険

江戸川乱歩 1956年(昭和31年)1月 「少年クラブ増刊」

文字数
23,964字
読了目安
約48分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 長野県

この作品について

江戸川乱歩が1956年(昭和31)1月、講談社の「少年クラブ」増刊号に書いた、少年探偵団ものの中編。春休みに長野県の温泉村へ出かけた小林団長たちが、雲の中から現れて動物や人をさらう「巨人の腕」の怪事件に出あう。怪異の正体を追ううちに、貨物列車から貨車が一両消えるという大がかりな事件が重なる。怪人二十面相は登場せず、小林少年の推理とその説明が中心となる、推理の面白さを前面に出した一編である。

あらすじ

春の休み、少年探偵団の小林団長と井上一郎、ノロちゃんの三人は、長野県の矢倉温泉にある井上君のおじさんの旅館に泊まりに行く。温泉村では、雲の中から巨人の腕が降りてきて、動物や畑のものをつかんでいくという噂があった。ある夕方、野天風呂で三人は、森に降りてきた巨大な腕が大きな白犬をつかみあげるのを目撃する。二日後には農家の少年・幸ちゃんも姿を消し、翌朝高い木の枝の上で見つかった。やがて、貨物列車の途中の貨車一両がそっくり消えるという事件がおこる。美術品を積んだ貨車はその後、森の中の専用支線で見つかるが、めぼしい品はすべて持ち去られていた。小林少年は、貨車が消えた手口を推理する。三人が力を合わせれば、ポイントの切り替えと連結器の付け替えで、走る貨物列車から貨車を一両だけ抜き取れる。そして三人組の犯人とは、野天風呂で出会って巨人の腕の話をした、東京から来た三人の客だった。小林少年は、こっそり撮っておいた三人の写真が決め手となって、犯人は東京で警視庁に逮捕される。美術品はすべてもどり、小林少年は別荘の主人から百万円の礼を受け取ることになる。

登場人物

冒頭部(原文より)

 少年探偵団の小林団長と、団員でいちばん力の強い井上一郎君と、すこしおくびょうだけれど、あいきょうものの野呂一平君の三人が、春の休みに、長野県のある温泉へ旅行しました。  その温泉を、仮に矢倉温泉と名づけておきましょう。国鉄から私設鉄道にのりかえて、矢倉駅でおり、すこし山道をのぼると、そこに、温泉村があります。山にかこまれた、けしきのよい温泉です。  その温泉のトキワ館という旅館の主人が、井上君のおじさんなので、小林団長と野呂君をさそって、五日ほど滞在する用意でやってきたのです。

「天空の魔人」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

「おい、吉報だぞ、別荘のご主人から電話でね、きみたち三人をつれて、すぐにきてくれというんだ。百万円のお礼を、早くわたしたいからってね。……だが、小林君、百万円もらったら、きみはどうするつもりだね。」 「少年探偵団の基金にして、明智先生にあずけます。そうすれば、探偵七つ道具だって、団員みんなに買ってやることができますからね。」  それを聞くと、井上君とノロちゃんが、両方から、小林団長に、すがりついていきました。  そして、声をそろえて、 「小林さん、よかったね。よかったねえ。」 といいつづけるのでした。

「天空の魔人」江戸川乱歩(青空文庫)

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