人外魔境 地軸二万哩(小栗虫太郎)のあらすじ・登場人物
地底の女王と世界の屋根の大魔境
- 冒険
- ミステリ
- 文字数
- 20,284字
- 読了目安
- 約41分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
小栗虫太郎が1939年(昭和14年)から『新青年』に連載した秘境冒険小説シリーズ「人外魔境」の一編。世界の魔境を踏破する探検家・折竹孫七が、今度はパミール高原の奥、ソ連と英領インドに挟まれたアフガニスタン領の大魔境「大地軸孔」に挑む。そこは、日に四百メートル余りも流れる化物のような速流氷河に守られ、底知れぬ裂け目から時おり不思議な怪光が立ちのぼる地である。出発の間際に探検から身を引いた折竹のもとに、「大地軸孔」の下に住む民を守りたいと訴える謎の女「ザチ」から手紙が届き、英国の情報機関もまた彼を狙う。地下に広がる伝説の大洞窟と油層をめぐって、列強の思惑と奇想が入り乱れる、時局色の濃い一編である。
あらすじ
ロンドンで、ドイツ航空会社の「大地軸孔」探検の隊長に決まっていた折竹孫七は、出発間際に参加をとりやめる。英国当局の厳しい監視に加え、自分の探検が他国を利するだけではないかと考えたからだった。その頃、「地底の女、ザチ」と名乗る謎の婦人から、地下の平和な民の暮らしを乱さないでほしいという手紙が届く。帰国の途中、アラビアの空港で英国の情報機関員セルカークに捕らえられ、殺されかけた折竹は、とっさに、東は外蒙からサハラまで地下に延びる大洞窟「大盲谷」と、その上に眠る無尽蔵の油層の話をして、相手の欲をかきたてる。命拾いした折竹は、オーマン王子の婚礼の宮苑で、「キンメリアの女王」として乗り込んできたザチと会う。その後イランの大塩沙漠へ向かい、明け方の台地の上にザチの姿を見るが、彼女はたちまち消える。地下への入口は実在すると確信した折竹は、英ソの監視者セルカークとオフシェンコを伴って大地軸孔の探検隊を率いる。季節風の猛雨で氷塔が崩れるのを待って速流氷河を渡り、底へ降りた三人だったが、地下の道は岩塩の壁で行き止まりになる。水が尽きかけたとき、セルカークは自分だけ助かろうとオフシェンコを撃つ。その銃火が油層のガスに引火して壁が崩れ、流れ出た原油がセルカークを押し流した。原油とともに流れてきたのはザチの亡骸で、懐にはソ連国家保安部員の身分証があった。地底の民の話は、折竹を誘うための彼女の芝居だったのだ。折竹は、祖国に殉じた彼女に礼をささげ、油層下の道を祖国のために得たことに凱歌をあげる。
登場人物
- 折竹孫七 世界的な探検家。大地軸孔探検の隊長に選ばれながら、出発間際に身を引く
- ザチ 「地底の女」を名乗る謎の婦人。探検をやめるよう折竹に訴え、「キンメリアの女王」として現れる
- セルカーク 英国の情報機関員。折竹を捕らえるが、油層の話に心を奪われる
- オフシェンコ ソ連が送った極氷研究家の監視者。寡黙で任務に忠実な男
冒頭部(原文より)
魔境からの使者 ――折竹氏、中央亜細亜へゆく。世界の屋根、パミール高原中の大魔境「大地軸孔」をさぐるため、近日ロンドンを出発、英印連絡空路により、アフガニスタンのグワダールへ赴く予定。
「人外魔境 地軸二万哩」小栗虫太郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
大塩沙漠から大地軸孔まで、油層の流れにのって此処まで来たザチ。ムスカットの宮苑でした別れの意味をいおうとして……いま折竹に抱かれている唇は綻び、この運命的な再会を悦ぶかのように、ザチの目はうっとりと開かれている。 しかし、この油層下の道へは、やがて故国の手が……。折竹は凱歌をあげた。
「人外魔境 地軸二万哩」小栗虫太郎(青空文庫)
原文を読む
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