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人外魔境 水棲人(小栗虫太郎)のあらすじ・登場人物

泥の底に人が棲む沼

  • 冒険
  • ミステリ

小栗虫太郎 1940年(昭和15年)3月 「新青年」

文字数
20,230字
読了目安
約40分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

小栗虫太郎が1939年(昭和14年)から『新青年』に連載した秘境冒険小説シリーズ「人外魔境」の一編。世界の魔境を踏破した鳥獣採集人・折竹孫七が、大晦日にブラジル焼酎を手に作家の「私」を訪ね、アルゼンチン地理学協会の雑誌に載った「沼底棲息人」の話を語り出す。舞台は南米の大未開地グラン・チャコ。流路の定まらない川がのみ込まれて消える荒湿地「パチニョの荒湿地」、通称「蕨の切り株」では、泥の中から人間が立ち上がって消えるのが目撃されていた。リオで出会った陽気な放浪者カムポスと、行方知れずの恋人を捜す米国人女性ロイスとともに、折竹は魔境に挑む。軽妙な人物描写と博物学的な奇想が交じり合う一編である。

あらすじ

リオ・デ・ジャネイロで暇をもてあましていた折竹孫七は、ナイトクラブ「恋鳩」を追い出された陽気な大男カムポスと意気投合し、彼が持つ未知の産地のダイヤ原石を見せられる。動物富籤が一番違いで外れたカムポスは、それを大運が近い兆しと信じ、折竹から借りた金で賭場に挑むが、すぐに無一文になる。するとカムポスは、ダイヤの新鉱地の所在を賭けると言い出す。それはグラン・チャコの荒湿地「蕨の切り株」にあり、パラグァイ軍の将校だった彼は、そこで泥の中から現れた胸に拳形の痣のある男に、ダイヤを包んだ化石の葉を投げつけられたのだという。五十万ミルで勝負を受けたのは、白百合のような米国人女性ロイス・ウェンライトだった。勝ちが見えていたカムポスはわざと負ける。投げられた包みに残っていた文字が、彼女の名だったのだ。ロイスの恋人で、パタゴニア人の保護を訴えた日系の医学者・三上重四郎の胸にも、同じ痣があった。三人は湿地へ向かい、折竹は水棲人の謎を解いて、泥の中へ飛び込めと命じる。泥の下には、埋もれた古い密林のあいだに川の水が掘った地下の大迷路が広がっていた。三上はアルゼンチン政府に追われてそこへ落とされ、生き延びていたのだ。衰弱した三上を見つけたカムポスは彼を抱えて戻るが、自分は深みに落ち、崩れる泥に沈んでいく。「一番違い」とつぶやいた彼は、秘めた恋を明かすように『シラノ・ド・ベルジュラック』の一節を朗誦しながら消えた。

登場人物

冒頭部(原文より)

リオの軽口師  折竹孫七が、ブラジル焼酎の“Pinga”というのを引っさげて、私の家へ現われたのが大晦日の午後。

「人外魔境 水棲人」小栗虫太郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「哲学者たり、理学者たり、詩人、剣客、音楽家、また、天界の旅行者たり。恋愛の殉教者――カムポス・モンテシノスここに眠る」  そして、声が杜絶えた。

「人外魔境 水棲人」小栗虫太郎(青空文庫)

原文を読む

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