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鉄塔の怪人(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

鉄塔王国に潜むカブトムシ

  • ミステリ
  • 冒険

江戸川乱歩 1954年(昭和29年)1月 「少年」

文字数
83,374字
読了目安
約2時間47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 長野県

この作品について

江戸川乱歩が光文社の月刊誌「少年」に1954年(昭和29)の1年間連載した、少年探偵団ものの長編。夜の銀座にあらわれる巨大なカブトムシの化け物と、「鉄塔王国」への寄付を求める脅迫状が事件の入口となる。大人向け長編『妖虫』(1933〜34年)の着想を下敷きにしたとされ、赤いサソリが黒いカブトムシに置きかえられた。覗きからくり、落とし穴、変装、山中の怪しい城と、乱歩の少年物らしい趣向が詰まっている。

あらすじ

夕暮れの麹町を歩いていた小林少年は、覗きからくりを引く白ひげの老人に呼び止められ、森の中の塔のある建物と、カブトムシに襲われる鹿の絵を見せられる。数日後、真夜中の銀座に背中にどくろの紋様をもつ巨大なカブトムシが現れ、中学生の山村志郎が目撃する。やがて荻窪の実業家・高橋太一郎のもとに村瀬と名乗る男が現れ、「鉄塔王国」への一千万円の寄付をもとめる。応じなければ次男の賢二を王国の兵隊として連れ去るという脅しだった。高橋家には巨大なカブトムシが忍び込み、にせの明智探偵まで現れて、小林少年と書生の広田は明智事務所の地下室にとじこめられる。脱出した小林少年のおかげで一度は賢二は救われるが、賊は警察の警戒の裏をかき、ビニール製のカブトムシのぬけがらを使った手品のような方法で賢二を連れ去ってしまう。小林少年は賊の自動車の荷物入れにひそんで長野の山奥まで運ばれ、石造りの城と鉄塔のある「鉄塔王国」にたどりつく。王国の主は怪人二十面相で、さらわれた少年たちはカブトムシの兵隊にされていた。捕らわれた小林少年と賢二は鉄塔の屋上に閉じ込められるが、小林少年が放ったハトの知らせで駆けつけた明智と警官隊が一味を一網打尽にする。追いつめられた二十面相は、巨大なカブトムシの姿のまま鉄塔の屋上から身を投げ、「あばよ!」の声を残して地上へ消えた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 明智探偵の少年助手、小林芳雄君は、ある夕方、先生のおつかいに出た帰り道、麹町の探偵事務所のちかくの、さびしい町を歩いていました。  麹町には、いまでも焼けあとの、ひろい原っぱがのこっています。かたがわは、草のはえしげった原っぱ、かたがわは、百メートルもつづく長いコンクリートべい。もう、うすぐらくなったその町には、まったく人どおりがありません。気味がわるいほど、しずまりかえっています。  ヒョイと、コンクリートべいのかどをまがると、そこに、みょうなものがありました。車の上に、四角い、大きな箱のようなものがのせてあって、その箱のまえがわに、三センチほどの、小さな丸い穴がよこに五つならんでいるのです。そして、その車のそばに、ひとりの白ひげのじいさんが、立っていました。

「鉄塔の怪人」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 つぎの瞬間には、おそろしいことがおこりました。カブトムシは、てずりをのりこえたのです。明智探偵も、おおぜいの警官たちも、思わず「あっ。」と、声をたてました。しかし、もうおそかったのです。  巨大なカブトムシは、てすりの外がわに、しばらく、しがみついていましたが、やがて、スーッと、目もくらむ数十メートルの地上へと、矢のようにおちていきました。そのとき、かすかに「あばよ!」という声が、聞こえたように思われました。  これが、日本じゅうをさわがせたカブトムシ大王、怪人二十面相の、あわれなさいごだったのです。

「鉄塔の怪人」江戸川乱歩(青空文庫)

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