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寒さ(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

伝熱の理屈と踏切の血

  • 心理

芥川龍之介 1924年(大正13年)4月 「改造」

文字数
3,973字
読了目安
約8分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

「保吉もの」の一編。物理の教官室で同僚が披露する「恋愛は熱の伝わり方に似ている」という冗談と、数日後に保吉が踏切で見た轢死事故の現場が、彼の中で結びつく。冬の冷たさのなかに、小さな温かさがかすかに差す結びが印象に残る。

あらすじ

雪上がりの朝、物理教官室で、保吉は同僚の宮本から、「女も物体だ。恋愛は熱で、より逆上した男から女へと伝わる」という伝熱作用の理屈を聞かされる。結婚を控えた長谷川がからかわれるのを、保吉は笑って眺めていた。それから数日後の霜曇りの朝、保吉は踏切に人だかりができているのを見つける。女の子を助けようとして、踏切番が上り列車に轢かれたのだという。線路の上で血から水蒸気が昇るのを見た保吉は、宮本の言う伝熱の法則を思い出し、命の熱もまた刻薄に線路へ伝わってゆくのだと感じて、重苦しい気持ちにとらわれる。ホームで落とした赤革の手袋が、手のひらを上に取り残されているのを見たとき、保吉は、薄ら寒い世界にも、細い日の光がさすのを感じる。

登場人物

冒頭部(原文より)

 ある雪上りの午前だった。保吉は物理の教官室の椅子にストオヴの火を眺めていた。ストオヴの火は息をするように、とろとろと黄色に燃え上ったり、どす黒い灰燼に沈んだりした。それは室内に漂う寒さと戦いつづけている証拠だった。保吉はふと地球の外の宇宙的寒冷を想像しながら、赤あかと熱した石炭に何か同情に近いものを感じた。

「寒さ」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

それはちょうど無言のまま、彼を呼びとめているようだった。  保吉は霜曇りの空の下に、たった一つ取り残された赤革の手袋の心を感じた。同時に薄ら寒い世界の中にも、いつか温い日の光のほそぼそとさして来ることを感じた。

「寒さ」芥川龍之介(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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