散華(太宰治)のあらすじ・登場人物
死んで下さいと書いた友
- 心理
- 社会
- 文字数
- 10,172字
- 読了目安
- 約20分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
アッツ島で戦死した青年詩人への鎮魂の一篇。1944年(昭和19年)3月、雑誌「新若人」に発表された。前年に見送った二人の年少の友——病死した三井君と、北方の孤島で玉砕した三田循司君——を回想し、三田君から届いた最後の便りを書き写す。「大いなる文学のために、死んで下さい」というその一言に打たれた心を率直に記した、戦時下の太宰を代表する短編。
あらすじ
「玉砕」という題を原稿用紙に書いてみたが、それはあまりに美しい言葉だと思い直し、私は題を「散華」と改めた。ことし別れた二人の友人のことを書くためである。一人は小説を書いていた三井君。作品を持って来たときだけ玄関の戸をがらがらと音高くあけて入って来る青年で、私に悪口を言われつづけたまま、褒められることなく早春に病で死んだ。もう一人は三田循司君。東大国文科の学生で、私のもとを離れ、先輩の山岸さんのところで熱心に詩を学んでいた。出征後、私のもとには四通の便りが届く。たどたどしく甘えたような最初の一通から、便りは次第に苦しみを沈潜させていき、そして最後の一通が来た。私はその言々句々が好きで、遺稿集の第一頁に大きい活字で組んでもらいたいと願ったのである。
登場人物
- 私 二人の年少の友を見送った作家
- 三田循司 東大国文科の学生で詩人。北方の孤島アッツ島で玉砕した
- 三井君 小説を書いていた青年。私に一度も褒められないまま病で死んだ
- 戸石君 三田君の親友の学生。剣道三段で身の丈六尺に近い偉丈夫
- 山岸さん 三田君が詩を学んだ先輩の文学者
冒頭部(原文より)
玉砕という題にするつもりで原稿用紙に、玉砕と書いてみたが、それはあまりに美しい言葉で、私の下手な小説の題などには、もったいない気がして来て、玉砕の文字を消し、題を散華と改めた。 ことし、私は二人の友人と別れた。早春に三井君が死んだ。それから五月に三田君が、北方の孤島で玉砕した。三井君も、三田君も、まだ二十六、七歳くらいであった筈である。
「散華」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
私は、開巻第一頁に、三田君のあのお便りを、大きい活字で組んで載せてもらいたかったのである。あとの詩は、小さい活字だって構わない。それほど私はあのお便りの言々句々が好きなのである。 御元気ですか。 遠い空から御伺いします。 無事、任地に着きました。 大いなる文学のために、 死んで下さい。 自分も死にます、 この戦争のために。
「散華」太宰治(青空文庫)
名文
大いなる文学のために、 死んで下さい。 自分も死にます、 この戦争のために。
アッツ島で玉砕した若い詩人・三田循司が、戦地から太宰に送った最後の葉書の言葉。作品全体がこの数行を書き留めるために書かれたと、太宰自身が作中で述べている。
原文を読む
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