惜別(太宰治)のあらすじ・登場人物
仙台に学んだ若き日の魯迅
- 心理
- 文字数
- 91,974字
- 読了目安
- 約3時間4分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 宮城県
この作品について
太宰治が1945年(昭和20年)9月、朝日新聞社から刊行した長編。内閣情報局と文学報国会の依頼で書かれた作品ながら、宣伝色を抑え、仙台医学専門学校に学んだ若き日の魯迅(周樹人)の姿を、同級生だった一老医師の回想という形で描く。異国に学ぶ周さんと、周囲の日本人学生や教師との交わりが、清々しい友情の物語として綴られる。太宰の作品のなかでも異色の力作。
あらすじ
東北のある村で開業する老医師のもとに、新聞記者が訪ねてきて、仙台医専で中国人留学生・周樹人(のちの魯迅)と同級だったころの思い出を語ってほしいと頼む。老医師は、四十年ほど前、明治の仙台で過ごした学生時代を回想しはじめる。清国からただ一人留学してきた寡黙な青年・周さん。医学によって祖国の民を救おうと真剣に学ぶ彼と、「私」は次第に心を通わせ、友情を育んでいく。解剖学の藤野先生の温かい指導、下宿での語らい、日本人学生の無理解や偏見——異国での孤独に耐えながら、周さんは、医学よりもまず国民の精神を変えねばならぬと思い定めていく。ある日、幻燈で祖国の同胞の姿を目にした周さんは、ついに医学を捨てて文学の道へ進む決意を固める。惜別の情を胸に、「私」は「新生」を志して祖国へ帰っていく友を見送るのだった。
登場人物
- 私(老医師) 仙台医専で周さんと同級だった、いまは東北の村医者
- 周さん(周樹人) 清国から仙台医専に学ぶ寡黙な留学生。のちの魯迅
- 藤野先生 周さんを温かく指導する解剖学の教師
冒頭部(原文より)
これは日本の東北地方の某村に開業している一老医師の手記である。先日、この地方の新聞社の記者だと称する不精鬚をはやした顔色のわるい中年の男がやって来て、あなたは今の東北帝大医学部の前身の仙台医専を卒業したお方と聞いているが、それに違いないか、と問う。そのとおりだ、と私は答えた。
「惜別」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「どんな名前ですか?」 「新生。」 と一言、答えて微笑した。その笑いには、周さん自ら称していたあの「奴隷の微笑」の如き卑屈の影は、みじんも見受けられなかった。
「惜別」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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