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親友交歓(太宰治)のあらすじ・登場人物

押しかけた自称親友の半日

  • 心理
  • 風刺

太宰治 1946年(昭和21年)12月 「新潮」

文字数
14,792字
読了目安
約30分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 青森県

この作品について

敗戦直後の津軽を舞台にした短編。1946年(昭和21年)12月、雑誌「新潮」に発表された。空襲で焼け出され生家に疎開していた「私」のもとへ、小学校の同級生だったと名乗る男が訪ねてくる。傍若無人にウイスキーを飲み干し、毛布までねだる客に対して、終始「軽薄なる社交家」であり続けた半日を苦い自嘲とともに描く。戦後の世相と人間関係の力学を鋭くとらえた後期の代表的短編。

あらすじ

昭和二十一年九月のはじめ、罹災して津軽の生家に疎開していた「私」のもとへ、野良着姿の大きな親爺がのっそりと訪ねてくる。小学校の同級生の平田だという男は、覚えのない喧嘩の傷跡を持ち出し、クラス会をやろうと持ちかけ、やがて「酒は無いのか」と切り出した。秘蔵のウイスキーを次々に空け、女房に酌をさせろと言い、東京時代の自慢話を並べ、罹災者への配給の毛布までよこせとねだる。荒れ馬は避くべし——私は終始「軽薄なる社交家」を演じ、最後の一本まで手土産に持たせて玄関へ送り出す。いよいよ別れるという時、男は私の耳元で烈しくこう囁いた。

登場人物

冒頭部(原文より)

昭和二十一年の九月のはじめに、私は、或る男の訪問を受けた。  この事件は、ほとんど全く、ロマンチックではないし、また、いっこうに、ジャアナリスチックでも無いのであるが、しかし、私の胸に於いて、私の死ぬるまで消し難い痕跡を残すのではあるまいか、と思われる、そのような妙に、やりきれない事件なのである。  事件。  しかし、やっぱり、事件といっては大袈裟かも知れない。私は或る男と二人で酒を飲み、別段、喧嘩も何も無く、そうして少くとも外見に於いては和気藹々裡に別れたというだけの出来事なのである。

「親友交歓」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

小学校時代の同級生とは言っても、私には、五、六人の本当の親友はあったけれども、しかし、このひとに就いての記憶はあまり無いのだ。彼だって、その頃の私に就いての思い出は、そのれいの喧嘩したとかいう事の他には、ほとんど無いのではあるまいか。しかも、たっぷり半日、親友交歓をしたのである。私には、強姦という極端な言葉さえ思い浮んだ。  けれども、まだまだこれでおしまいでは無かったのである。さらに有終の美一点が附加せられた。まことに痛快とも、小気味よしとも言わんかた無い男であった。玄関まで彼を送って行き、いよいよわかれる時に、彼は私の耳元で烈しく、こう囁いた。 「威張るな!」

「親友交歓」太宰治(青空文庫)

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