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手巾(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

武士道と、その裏の演技

  • 心理

芥川龍之介 1916年(大正5年)10月 「中央公論」

文字数
7,384字
読了目安
約15分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

新渡戸稲造を思わせる東京帝大教授・長谷川謹造を主人公に、日本の武士道と、そこにひそむ演技性とを問うた短編。1916年(大正5)に『中央公論』に発表された。教え子の母親の訪問を受けた一場面を軸に、教授が受けた印象とその意味づけを描く。文明と道徳の内実を醒めた眼で見据えた、芥川の初期の代表作の一つである。

あらすじ

東京帝国大学教授の長谷川謹造は、ヴェランダでストリンドベリの『作劇術』を読みながら、日本の文明について思いをめぐらせている。そこへ、教え子の母親である一人の婦人が訪ねてくる。用件を尋ねると、婦人はつい先ごろ息子が病で亡くなったことを、少しも取り乱さず、むしろ微笑さえ浮かべて淡々と語る。その落ち着きに感心した教授だったが、ふと落とした団扇を拾おうと机の下を見て、婦人が膝の上でハンケチを両手で握りしめ、引き裂かんばかりに震わせているのに気づく。顔は笑い、手は泣いている——教授はそこに、感情を抑える日本女性の、武士道的な美を見て深く感動する。ところがその夜、再びストリンドベリを開くと、そこには「顔で笑い手で悲しみを表す」演技を、型にはまった通俗的手法として難じる一節があった。あの母親の振る舞いも、所詮は演技だったのか。教授は説明のつかない不快さを抱え、岐阜提灯の明かりをじっと見つめるのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

東京帝国法科大学教授、長谷川謹造先生は、ヴエランダの籐椅子に腰をかけて、ストリントベルクの作劇術を読んでゐた。

「手巾」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

先生は、不快さうに二三度頭を振つて、それから又上眼を使ひながら、ぢつと、秋草を描いた岐阜提灯の明い灯を眺め始めた。

「手巾」芥川龍之介(青空文庫)

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