素描三題(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
三人の風変りな人物
- 心理
- 文字数
- 2,456字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
「お宗さん」「裏畠」「武さん」の三つの人物スケッチを並べた小品。髪の薄い女、線路脇の畑で起きた出来事、聖書を筆写する行商人と、それぞれに少し風変わりな人物と場面を、短い筆で写し取る。末尾に昭和二年五月の日付がある。
あらすじ
一「お宗さん」は、髪の毛が薄いために嫁がない覚悟でいる女。一中節の師匠になろうと稽古に励むが叶わず、震災で家も焼かれ、一時は頭の具合も妙になったらしい。毛生え薬に蝙蝠の生き血まで頭に塗っていた。二「裏畠」は、線路脇の畑でポンポン・ダリアを作っていたKさんの話。汽車が通りすぎた直後、畑の隅に、轢かれた若い男の頭がころげ落ちてきて、鶏と見間違えたKさんはあっけにとられる。三「武さん」は、二十八歳のとき救いを求めて小説家や思想家を訪ね歩いたすえ、聖書を筆写しながら行商をするようになった男。蟇を踏みつぶして祈ると、翌朝、牛乳配達から、蟇は草の中に逃げ込んだと聞き、感謝の祈りを捧げた。語り手は、奇蹟ではなく、そういう人が現にいることを語りたいのだと言う。
冒頭部(原文より)
お宗さんは髪の毛の薄いためにどこへも縁づかない覚悟をしてゐた。が、髪の毛の薄いことはそれ自身お宗さんには愉快ではなかつた。お宗さんは地肌の透いた頭へいろいろの毛生え薬をなすつたりした。
「素描三題」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
僕は現世にもかういふ奇蹟の行はれるといふことを語りたいのではない。唯現世にもかういふ人のゐるといふことを語りたいのである。僕の考へは武さんの考へとは、――僕にこの話をした武さんの考へとは或は反対になるであらう。しかし僕は不幸にも武さんのやうに信仰にはひつてゐない。従つて考への喰ひ違ふのはやむを得ないことと思つてゐる。
「素描三題」芥川龍之介(青空文庫)
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