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平の将門(吉川英治)のあらすじ・登場人物

裸の男が残ったともいえる

  • 歴史

吉川英治 1950年(昭和25年)1月 「小説公園」

文字数
232,185字
読了目安
約7時間44分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 茨城県
  • 千葉県
  • 東京都

この作品について

大逆人の濡れ衣を着せられて一千年——吉川英治が、坂東平野に生きた一人の男として平将門を描き直した長編。原始のすがたから人間の住む大地へ移りかけていた関東の風土を背景に、都の権門に翻弄され、一族の争いに巻き込まれ、やがて「新皇」と呼ばれるに至る道筋をたどる。「やはり、さいごは、裸の彼が、残ったともいえる。裸は尊い」という結びの一節が、作者の見方をはっきり示している。

あらすじ

原始のすがたから、徐々に、人間のすむ大地へ——坂東平野はいま大きく移りかけていた。太古からの自然もあちこち痍だらけになり、まぬがれぬ脱皮を苦悶するように、大平原を遠く繞る富士も浅間も那須ヶ岳も硫黄色の煙を常に噴いている。物語はその風土の描写から始まり、若き将門の姿を映し出す。都に上って藤原忠平に仕え、坂東へ帰った彼を待っていたのは、伯父たちとの所領と女をめぐる争いであった。旅の途上、野霜の具足師の家に泊まった将門が、朝の陽にまばゆげな顔を浮かせた十六、七の娘をふと馬上から見る——そんな細やかな場面が、大きな戦さの合間に置かれてゆく。……一族との私闘は次第に規模を増し、やがて国衙を襲うに至って、事は朝廷への反逆と見なされる。将門は「新皇」と称され、坂東の独立をうたい上げるが、その天下は長くは続かなかった。作者は終章で、神皇正統記などに残る貞盛・秀郷の記事を「後の粉飾」と切り捨て、後世の武門が家祖を飾るために箔をつけていったのだと述べる。だから秀郷も貞盛も偶像であって、ほんとうの人間そのものではない。しかし将門は、今でも人間そのままを感じさせる。大逆人の濡れ衣を着せられて一千年、もう彼の偽官や僭上説を真に受ける人はいない——「やはり、さいごは、裸の彼が、残ったともいえる。裸は尊い」。

登場人物

冒頭部(原文より)

御子と女奴  原始のすがたから、徐々に、人間のすむ大地へ。  坂東平野は、いま、大きく、移りかけていた。  ――ために、太古からの自然も、ようやく、あちこち、痍だらけになり、まぬがれぬ脱皮を、苦悶するように、この大平原を遠く繞る、富士も浅間も那須ヶ岳も、硫黄色の煙を常に噴いていた。

「平の将門」吉川英治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 だから、秀郷、貞盛などは、今日まで、どんな美名をもって来たところで、それは偶像であって、ほんとの人間そのものではなかった。しかし将門は、今でも人間そのままを感ぜしめる。天慶以来、一千年。大逆人の濡れ衣を着せられて来たが、もう彼の偽官だの僭上説を、真にうける人はいない。やはり、さいごは、裸の彼が、残ったともいえる。裸は尊い。

「平の将門」吉川英治(青空文庫)

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