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都会の中の孤島(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

都会にもある孤島の殺意

  • ミステリ
  • 心理

坂口安吾 1953年(昭和28年)3月 「小説新潮」

文字数
13,205字
読了目安
約26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1953年(昭和28年)3月、「小説新潮」に発表された坂口安吾の短篇。冒頭でアナタハン島の事件にふれ、一人の女をめぐる殺し合いは戦争の孤島でなくても、都会の飲み屋のような「孤島」で起こりうると語り出す。東京の飲み屋の女中ミヤ子と、彼女に結婚を迫る二人の男、そして店で起きた事件の顛末を、乾いた語り口で描く犯罪小説で、安吾が戦後に書いた推理ものの系列に入る。

あらすじ

アナタハン島の事件にふれ、一人の女をめぐる殺し合いは都会の「孤島」でも起こりうると語り起こす。東京の飲み屋「ふじの家」の女中ミヤ子は、所持金の多寡で一夜の相手を決める女で、運転手のグズ弁と、泥棒と噂される右平の二人から結婚を迫られ、どちらにも「あの人さえいなければ」と答えていた。グズ弁はグズと呼ばれながら身を守る本能に長けた男で、彼女が昼間に学生の中井のもとへ通い、貢いでいることを突きとめる。ミヤ子は自分たち二人を共倒れにさせるつもりだと悟り、護身のためスパナーを持ち歩く。ところがミヤ子はそれを常連の前で言いふらす。ある晩、店の売上げのために飲まされて眠り込んだグズ弁が夜明けに目を覚まして階下へ降りると、足もとに血まみれのスパナーがあり、店の主人夫婦が撲殺されていた。動転して凶器を川へ捨てたグズ弁は逮捕され、死刑の判決を受ける。のちに赤線で働くミヤ子は、真犯人は中井で、自分は黙って見逃したのだと別の男に打ち明け、誰が死刑になってもかまわないと笑い放つ。

登場人物

冒頭部(原文より)

 アナタハン島の悲劇はむろん戦争がなければ起らなかった。第一たがいに顔を知り合うこともなく、それぞれが相互に無関係の一生を送ったであろう。  しかし、アナタハンのような事件そのものは、戦争がなければ起り得ない性質のものではない。  一人の女をめぐって殺し合うのは、山奥の飯場のようなアナタハンに外見の似た土地柄でなくとも、都会の中でもザラにありうることだ。  アナタハンには法律も刑事も存在しなかったから、各人の心理は我々とちがって開放的で、そこにおのずから差があった筈だと見るのもうがちすぎているようだ。

「都会の中の孤島」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

「思わないわね。だいたい、あんた、世の中なんて、いい加減でいいのよ。一々キチンキチンやられちゃ、やりきれないわよ。私はね、誰かが下の夫婦を殺しゃいいのに、とバクゼンと思っていたわね。だいたい誰が誰を殺したってかまうこたアありゃしないよ。なんでも商売さ。人殺しの商売もあるし、人殺しをつかまえる商売もあるし、それがあんた、ちがった犯人をつかまえたって、男が入れ代ってるだけじゃないか、そんなこと云ってたら、パンパンなんか、してられるもんか。戦争も、そんなものだわよ。みんな、いい加減だから、それで世の中がまるくいくのさ。へ。グズ弁が犯人で悪かったら、あんた、パンパン屋へ遊びにくるの、およしよ」 「わるかったな」 「ハッハッハア」  二人の会話はどうやらそこで終りをつげたようであった。グズ弁はいずれ死刑になるだろう。

「都会の中の孤島」坂口安吾(青空文庫)

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