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特攻隊に捧ぐ(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

特攻隊員の心情を疑るな

  • 社会

坂口安吾 1947年(昭和22年)2月

文字数
3,146字
読了目安
約6分
表記
新字新仮名

この作品について

敗戦後の特攻隊への風当たりに対して、特攻隊員の心情を疑わず、その情熱と苦悩を敬う立場から書かれた坂口安吾の評論。図書カードによれば「ホープ」1947年(昭和22年)2月号に掲載予定だったが、検閲により「軍国主義的」として削除された。戦争は呪いながらも、強要されたものであってもそこに燃えた殉国の情熱は否定すべきでないと語る。底本は没後の全集。

あらすじ

(内容の要旨)敗戦後は特攻隊員を「死にたくない」人間とばかり描く傾きがあるが、安吾は、戦争の中にも真実の花をさがすべきだと述べる。特攻隊を戦法として好んだ、特攻隊員は兵隊ではなく工業力の劣勢をおぎなう最も簡便な操縦器であり兵器だった、と書く一方で、文学者としてあらゆる人性を疑う自分にも、隊員の心情だけは疑らぬほうがよいという。死にたくない本能との格闘を経て、ゴロツキやバクチ打ちであったかもしれない若者が命をささげた事実を、安吾は「愛国の詩人」と呼んで讃える。もっとも、これは戦争が奇蹟を行ったということではなく、国のために死ぬことを強要したにすぎず、戦争は最も呪うべきものだと自ら断る。それでも強要と切り離して、燃焼そのものを敬愛したい。そして青年たちに、かつて胸に宿った殉国の情熱が間違ったものではなかったという自信を持ってほしいと結ぶ。

冒頭部(原文より)

 数百万の血をささげたこの戦争に、我々の心を真に高めてくれるような本当の美談が少いということは、なんとしても切ないことだ。それは一に軍部の指導方針が、その根本に於て、たとえば「お母さん」と叫んで死ぬ兵隊に、是が非でも「天皇陛下万歳」と叫ばせようというような非人間的なものであるから、真に人間の魂に訴える美しい話が乏しいのは仕方がないことであろう。  けれども敗戦のあげくが、軍の積悪があばかれるのは当然として、戦争にからまる何事をも悪い方へ悪い方へと解釈するのは決して健全なことではない。

「特攻隊に捧ぐ」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

 私は戦争を最も呪う。だが、特攻隊を永遠に讃美する。その人間の懊悩苦悶とかくて国のため人のためにささげられたいのちに対して。先ごろ浅草の本願寺だかで浮浪者の救護に挺身し、浮浪者の敬慕を一身にあつめて救護所の所長におされていた学生が発疹チフスのために殉職したという話をきいた。  私のごとく卑小な大人が蛇足する言葉は不要であろう。私の卑小さにも拘らず偉大なる魂は実在する。私はそれを信じうるだけで幸せだと思う。  青年諸君よ、この戦争は馬鹿げた茶番にすぎず、そして戦争は永遠に呪うべきものであるが、かつて諸氏の胸に宿った「愛国殉国の情熱」が決して間違ったものではないことに最大の自信を持って欲しい。  要求せられた「殉国の情熱」を、自発的な、人間自らの生き方の中に見出すことが不可能であろうか。それを思う私が間違っているのであろうか。

「特攻隊に捧ぐ」坂口安吾(青空文庫)

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