虎の話(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
炬燵で聞く虎のお話
- 家族
- 文字数
- 1,473字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
芥川龍之介の掌編。師走の夜、炬燵に入った父と五歳の男の子の、ほぼ会話だけで進む小品。子どもにせがまれた父が、朝鮮の虎をめぐる話を三つ語って聞かせる。「子」「父」と台詞だけを並べた形式で、昔話の語り口と、眠くなっていく子どもの調子が描かれる。末尾に大正14年12月の日付がある。
あらすじ
師走の夜、父は五歳の男の子を抱いて炬燵にはいり、虎の話をせがまれる。父はまず、酔って山道で眠った朝鮮のラッパ卒が、顔を撫でる虎の尻尾に目を覚まし、持っていたラッパを虎の尻へ突き立てる話をする。次に、岩へ飛びつこうとして二度とも届かず、恥ずかしそうに去っていった虎を、猟師が撃たずに見逃す話。それでも子は「もう一つ」とせがむので、父は三つ目に、矢を受けて帰った母虎が、三匹の子虎と普段どおり遊び、夜明けには子虎たちの真ん中で死んでいる話を始める。話の途中で子は寝入ってしまい、父は遠くの女中に子を引き取らせる。
登場人物
- 父 子どもに虎の話をする父親
- 子 五歳の男の子
冒頭部(原文より)
師走の或夜、父は五歳になる男の子を抱き、一しよに炬燵へはひつてゐる。 子 お父さん何かお話しをして! 父 何の話? 子 何でも。……うん、虎のお話が好いや。 父 虎の話? 虎の話は困つたな。 子 よう、虎の話をさあ。 父 虎の話と。……ぢや虎の話をして上げよう。昔、朝鮮のらつぱ卒がね、すつかりお酒に酔つ払らつて、山路にぐうぐう寝てゐたとさ。すると顔が濡れるもんだから、何かと思つて目をさますと、いつの間にか大きい虎が一匹、尻つ尾の先に水をつけてはらつぱ卒の顔を撫でてゐたとさ。
「虎の話」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
父 ところが或秋の日の暮、虎は猟師の矢を受けて、死なないばかりになつて帰つて来たとさ。何にも知らない三匹の子虎は直に虎にじやれついたとさ。すると虎はいつものやうに躍つたり跳たりして遊んだとさ。それから又夜もいつものやうに洞穴へはひつて一しよに寝たとさ。けれども夜明けになつて見ると、虎は、いつか三匹の子虎のまん中へはひつて死んでゐたとさ。子虎は皆驚いて、……おい、おきてゐるかい? 子 (寝入つて答へをしない)…… 父 おい、誰かゐないか? こいつはもう寝てしまつたよ。 遠くで「はい、唯今」といふ返事が聞える。
「虎の話」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。