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投手殺人事件(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

三百万円の身売りと殺人

  • ミステリ

坂口安吾 1950年(昭和25年)4月 「講談倶楽部」

文字数
28,224字
読了目安
約56分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 京都府
  • 東京都

この作品について

1950年、「講談倶楽部」に載った坂口安吾の推理小説。女優と恋仲になった新人投手の身売りに、映画会社と新聞社が三百万円の札束を積み、京都の嵐山で投手が殺される。物語の途中で「犯人は誰か」と読者に挑み、解決篇で警部が謎を解く、犯人当ての形式をとる。「不連続殺人事件」で本格推理に挑んだ安吾が、プロ野球の選手獲得合戦という当時の世相を舞台にした軽快な一編。

あらすじ

一月九日、朝日撮影所の宣伝部長細巻のもとへ、一か月ぶりに女優の暁葉子が現れる。恋人はチェスター軍の新人王の速球投手大鹿で、ごろつきの夫岩矢天狗への手切れ金に三百万円が要るため、出演料の前借りを頼みに来たのだという。細巻は名スカウトの煙山に相談し、会社は大鹿の契約金百万と葉子の前貸し二百万、計三百万円を用意する。専売新聞や桜映画も大鹿を狙い、女スカウトの上野光子が動いて、獲得合戦は熾烈になる。煙山は国府・桃山の両選手とも話をつけたうえで、五百万円の札束をカバンに入れ、尾行をまくために変装して京都へ向かう。専売新聞の記者羅宇木介と金口副部長が東京駅から煙山を追うが、煙山は座席を変え、途中の大阪で降りて二人の選手の家を訪ねるなど、巧みに動く。ところがその夜、大鹿は嵐山の隠れ家で何者かに刺し殺され、三百万円は消えてしまう。血まみれの岩矢天狗、上野光子、煙山、一服投手らが容疑者として警察に集められ、作者は読者に犯人を問う。解決篇で居古井警部は、尾行の記録を手がかりに、煙山が汽車を途中で降りて特急に乗りかえ、先に京都へ着いて大鹿を殺し、金を奪ったと見抜く。契約書の毛筆の署名が、走る汽車の中では書けない楷書だったことが綻びだった。煙山のアジトのアパートから、血まみれの衣類と三百万円、凶器が発見される。

登場人物

冒頭部(原文より)

 新しい年も九日になるのに、うちつづく正月酒で頭が痛い。細巻宣伝部長が後頭部をさすりながら朝日撮影所の門を通ろうとすると、なれなれしく近づいた男が、 「ヤア、細巻さん。お待ちしていました。とうとう現れましたぜ。暁葉子が。インタビューとろうとしたら拒絶されましたよ。あとで、会わして下さい。恩にきますよ」

「投手殺人事件」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

居古井警部はニッコリ一笑して、予期した品々を指してみせ、そして二人の肩をたたいた。 「これが、君たちから、ヒントをもらった御礼だよ。ほかの新聞記者がこないうちに、すぐ支局へ走って、東京の本社へ電話したまえ。そして、例の尾行記を大至急、書きあげることさ。じゃア、サヨナラ」  彼はニヤリと笑って二人の耳に口をよせ、 「新聞社の金一封と、私の警察の金一封と、どちらが重いかな。ワッハッハ」  笑いながら、二人を部屋から押しだして、サヨナラ、とささやいた。

「投手殺人事件」坂口安吾(青空文庫)

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