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宇宙尖兵(海野十三)のあらすじ・登場人物

ベルリン発、秘密の宇宙艇

  • SF
  • 冒険

海野十三 1943年(昭和18年)7月 「新青年」

文字数
35,974字
読了目安
約1時間12分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

1943年(昭和18年)、雑誌「新青年」に掲載された海野十三の中編SF。ベルリンに滞在していた日本人の「僕」が、リーマン博士の「超冒険旅行」の話に乗り、秘密の宇宙艇に記者として乗り込むことになる。博士の目的は、太陽系に侵入しているというX宇宙族の動向を探ることだった。艇は重力平衡圏を越え、宇宙の墓地を抜けて月世界に近づいていく。冒頭の作者の言葉で明かされるとおり、月の手前で物語は終わる。宇宙旅行そのものの描写に力を入れた、日本の初期宇宙SFの一編である。

あらすじ

ベルリンで退屈していた日本人の「僕」は、リーマン博士から、生命を預けてもらいたいという奇妙な申し出を受け、「超冒険旅行」への同行を承諾する。集合場所は郊外の地下飛行場。ところが「僕」は不覚にも眠らされ、気がつくと正六面体の部屋に閉じ込められていた。やがて部屋は「記者倶楽部」となり、日本人の記者仲間である魚戸、フランス人のベラン夫妻、ドイツ人記者らが集う。宇宙艇のリーマン艇長は、この旅行の目的が、太陽系に侵入しているというX宇宙族の動向を探ることだと語る。艇は人工重力を施し、地球と月の重力が打ち消し合う重力平衡圏に入る。そこは墜落した無数の宇宙船が漂う「宇宙の墓地」であり、艇は大作業の末にそこを脱出する。艇内ではベラン氏が装置で微粒子に分解され、地球へ送られる実験が成功する。艇長は、同じ装置を月と火星に据え、X宇宙族に対抗する計画を「僕」に打ち明ける。物語は、月世界の手前で終わる。

登場人物

冒頭部(原文より)

競争者  どえらいことを承諾してしまった。 「ようがす。どうせ当分ベルリンから抜けられそうもないし、それにひどく退屈しているんですから、生命の大安売、僕の体を気前よく賭けまさあね」  と、僕はその朝リーマン博士の前で、あっさりと返答を与えたわけであるが、それから始まって、もう抜きさしならぬこととなった。途中に二三度、これはよしたがいいかもしれぬと思いはしたものの、日本人たるものが一旦引受けておいて前言を飜したのでは、怖じ気をふるったようでみっともないから、未練も逡巡もぐんぐん胸の奥へ嚥みこんで、なんでも持っておいでなさい一切承知しましたと、リーマン博士の提案を全面的に引受けてしまったのである。

「宇宙尖兵」海野十三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「そうなんだ。もう君も気がついていると思うが、宇宙旅行をするには、人間の生命はあまりに短かすぎる。そこで本艇においては、妻帯者を乗り込ませてあるばかりか、今後も艇内において出来るだけ結婚を奨励し、一代で行けなければ二代でも三代でもかかって目的を達するという信念を今から植付けて置こうと思い、それを実行しているのだ。また幼児や子供が、宇宙旅行のうちに、何か変った生長をするのではないか、それも確めたいと思っている。しかしそれにしても、もっと手取り早い旅行法が考えられなければならないと思い、かねて秘密に研究を続けていたのが、君がさっき見た微粒子解剖整形法だ」  博士は、ここで言葉を切って、卓子の硝子板の下においてある宇宙図を指しながら、 「わしの今度の旅行の目的の第一は、前にも話したように、X宇宙族が宇宙のどのあたりまで侵入してきているかを確めることにあるが、第二には、今の微粒子解剖整形の装置の一組を月世界に、もう一組を火星に据付けることにあるのだ。これは非常に重大な計画であって、もしこれがうまく据付けられ、完全に働きだすとしたら、われわれはなにも年月の夥しくかかる宇宙艇などのお世話にならないでも、地球と月と火星の間を、数時間乃至数十分で旅行することが出来るわけだ。更に進んで、もっと遠い宇宙へも行くことが出来るようにもなるのだ。そういうわけだから、これは如何に重要なものであるか、君にも分るだろう」

「宇宙尖兵」海野十三(青空文庫)

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