右門捕物帖 足のある幽霊(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
指を切り取る小柄な怪力の賊
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 24,766字
- 読了目安
- 約50分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第十三話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。春雨の二月末、小石川台町と厩河岸の離れた二か所に、半刻と違わず同じ賊が押し入り、主人の左手の親指と人さし指を切り取っていった。賊は五尺に満たない優男なのに、一刀流の若侍さえ手も足も出ない怪力だという。奉行の言づてを横取りしたあばたの敬四郎が先に手を染め、右門は思わぬ隠居扱いに。地図を手に江戸の町を読む右門の推理が見どころ。
あらすじ
小石川台町と厩河岸で、続けて主人の左手の指が二本ずつ切り取られる怪事が起こる。あばたの敬四郎は奉行からの右門への言づてを握りつぶして事件を横取りし、伝六は悔しがる。右門は浅草で江戸の絵図面を買い、賊の出た場所を書き込んで、次は本石町と黒門町だと予言する。そのとおり翌晩、本石町の佃煮屋と紙問屋が襲われたうえ、張り込んでいた敬四郎が行方知れずになった。被害者たちはそろって善良な町人で、賊の着物がぬれて松やにの匂いがしたと証言する。右門は深川の一流の舟宿に上がって昼寝をし、夜になると舟を出して、河岸に松の木がある白壁の屋敷を探しあて、塀ぎわに泥の足跡を見つける。張り込んだ舟の前に塀を越えて現れた賊は、右門の一喝で崩れ落ちた。覆面の下は女で、夢遊病に取りつかれていた。女は江戸節を流していた元芸人で、六十二の強欲な仏画師眠白に囲われていたが、眠白を嫌い、弟子の五雲と心を通わせた。眠白は見せしめに五雲の指を一本ずつ切り取り、最後の左手の親指と人さし指まで奪った。思いつめた女は、他人の指を取ってくれば五雲の手が治ると夢の中で思いこみ、自分でも知らぬまま押し込んでいたのだった。右門が眠白の屋敷に踏み込むと、五雲は食を断たれて殺されており、女の罪から自分の悪事が露見するのを恐れた眠白が、敬四郎を襲ってさらい、縛りあげていた。敬四郎ののどに刃を突きつける眠白の手を右門は小柄で射抜いて取り押さえ、やせこけた敬四郎のいましめを解いてやる。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。絵図面で賊の行き先を読み当てる
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。敬四郎の横取りにかんかんになる
- あばたの敬四郎 右門と功名を争う同心。奉行の言づてを握りつぶして事件に乗り出す
- 賊 五尺に満たない優男の姿で押し入り、怪力で主人の指を切り取る
- 眠白 江戸で一、二といわれる強欲な仏画師。河岸に屋敷を構える
冒頭部(原文より)
1 ――今回は第十三番てがらです。 それがまた妙なもので、あとを引くと申しますのか、それともこういうのがまえの世からの約束ごととでも申しますのか、この十三番てがらにおいて、ひきつづき、またまたあのあばたの敬四郎がおちょっかいを出して、がらにもなく右門とさや当てをすることになりましたから、まことに捕物名人としては、こうるさい同僚をかたき役に持ったというべきですが、事の端を発しましたのは、二月もずっと押しつまって、二十八日の朝でした。
「右門捕物帖 足のある幽霊」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
命じておいて、敬四郎のかたわらに歩みよりながら、ぷつりそのいましめを切り解くと、あの秀麗な面に、ほのぼのとした微笑をうかべながら、いかにも右門らしい皮肉をずばりとひとこと浴びせかけました。 「げっそりおやせなすったようだが、どうやらこれでまた命がつながりましたから、たんと娑婆の風でもお吸いなさいましよ」 そして、そのひとことの皮肉で、いっさいの憎みが洗い流されでもしたかのように、さっさと伝六のあとを追いました。
「右門捕物帖 足のある幽霊」佐々木味津三(青空文庫)
原文を読む
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