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右門捕物帖 達磨を好く遊女(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

首くくりの若者と小さな達磨

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
21,477字
読了目安
約43分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第九話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。九月の末、父の命日の墓参と碁で夜ふけになった右門は、帰りの道すがら、首をつったばかりの若者を助ける。子細を語らぬ若者の紙入れから出てきたのは、小さな起き上がりこぼしの達磨がひとつ。右門はわけを問わぬと約束したうえで、この達磨だけを手がかりに吉原へ乗り込む。不粋な客を装う右門の遊び方と、伝六のうろたえぶりがおかしい。

あらすじ

父の祥月命日、伝通院で碁を打って夜ふけに帰る途中、右門はお茶の水の木の枝で首をつった若者を救う。若者は子細を語らず、命より大事そうにする紙入れには小さな起き上がりこぼしの達磨が入っていた。右門はわけを聞かぬと約して若者を屋敷に預け、翌朝、伝六を連れて吉原へ向かう。揚げ屋でわざとがさつなおしゃべり女を呼び、達磨好きの遊女を尋ねると、江戸町角菱楼の薄雪だとわかる。薄雪は十日ほど前、上方の絹商人を名乗る男に身請けされ、浅草馬道に住んでいた。間夫は二十三、四の色白の清吉で、助けた若者と人相が一致する。右門は近所の按摩の家から呼び出しをかけて薄雪に会い、清吉が死んだとかまをかけ、さらに無事を明かして心を開かせる。薄雪を身請けした男は、大坂で八つ化け仙次と呼ばれる呉服屋専門の凶賊だった。真面目な手代だった清吉は、薄雪に通ううち店の金百両に穴をあけ、その穴を埋めた仙次に、薄雪を手に入れる代償として、主家の家宝である豊太閤拝領の香箱を盗まされていた。薄雪は清吉を救うため、自ら仙次に身請けされて香箱を取り戻そうとしていたのである。右門は無頼漢を装って仙次の家に乗り込み、壁の仕掛けを見破られて刃を抜いた仙次を手裏剣と草香流で取り押さえ、隠し戸の奥から香箱を取り戻す。薄雪は、苦界でどこまで操を守れるか試すため、面壁九年の達磨に倣って身を律していたと打ち明ける。右門は二人を上方へ送り出す。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――今回はいよいよ第九番てがらです。  それがまた妙なひっかかりで右門がこの事件に手を染めることとなり、ひきつづいてさらに今回のごとき賛嘆すべきてがらを重ねることになりましたが、事の勃発いたしましたのは、前回の卍事件がめでたく落着いたしまして、しばらく間をおいた九月下旬のことでありました。下旬といってもずっと押しつまった二十八日のことでしたが、それも夜半をすぎた丑満どきに近い刻限のことです。

「右門捕物帖 達磨を好く遊女」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「さ、もうこれでわしの仕事は終わった。清吉どんは早くもとの無傷なからだになって、今度はふたりで夫婦達磨の修業をする義務があるゆえ、その香箱を携えて、こよいのうちにも上方へともども出立いたされよ」  なんで若きふたりの喜ばないでいられるべき、おどり狂うようにして右門に感謝の意をのこしながら、すぐと江戸をあとにいたしました。――そのうしろ姿にしぐれそぼふる九月末の、ふけまさった秋の夕やみが、そくそくと迫っていきました。  右門九番てがらは、かくて終わりを告げるしだいです。

「右門捕物帖 達磨を好く遊女」佐々木味津三(青空文庫)

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