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右門捕物帖 毒を抱く女(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

城の内濠に浮かんだ紅扇子

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
20,110字
読了目安
約40分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 神奈川県
  • 静岡県

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第三十一話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。長梅雨の明けた霧の朝、江戸城の内濠・牛ガ淵を見回る番士が、水面に浮かぶ女物の紅扇子と白綸子の懐紙入れを見つける。城内の変事は外へ漏らせない。お濠方の組頭は、伊豆守の言葉を思い出して右門をひそかに招く。舞台が城の内濠から大奥、さらに夜の東海道へと広がり、宿継ぎの早駕籠で箱根の関所を越える追跡が見せ場となる一編。

あらすじ

霧の朝、牛ガ淵の下の濠に、女物の紅扇子と懐紙入れが浮かんでいた。足軽たちがもぐろうとすると、泡の噴き出す場所は魔に吸いこまれるようで近寄れない。招かれた右門は、それを隠し井戸の水の噴き出しと見破り、長雨で水門が開いていたことから上の濠を探らせる。泥に逆さに突き刺さって沈んでいたのは、大小を差したままの若侍で、口の中の黒いものから毒を盛られて沈められたとわかる。持ち物から、死者は宝蔵のお刀番中山数馬と知れた。扇子の透かし骨から奥女中の品と見た右門は、大奥に出入りする口軽のお坊主可賀を使い、むっつり右門が乗りこむと大奥じゅうに言いふらさせる。翌朝、うろたえて宿下がりした御台所付きの腰元岩路の名が上がった。神田鍛冶町の御用槍師行徳助宗の娘である。右門が乗りこむと、岩路は数馬との縁組みの結納の品を突きつけられて罪を認めた。父の助宗は宝蔵の名槍八束穂の焼き直しを命じられ、その出来に魅入られて偽物とすり替えていた。見破った数馬は、口を閉ざす代わりに岩路との縁組みを迫ったため、ほかに恋人のいた岩路は菓子に毒を仕込んで数馬を殺したのだった。岩路は父の行き先を明かさずに毒を仰いで死ぬ。右門は弘法大師の画像と位牌のないことから、助宗が槍を持って高野山へ逃げたと見抜き、宿継ぎの早駕籠で東海道を追う。箱根の関所で、駕籠の太い肩棒こそ槍だと気づき、早馬で三島に宿止めをかけて助宗を捕らえ、八束穂の槍を取り戻す。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  その三十一番です。  江戸城、内濠の牛ガ淵。――名からしてあんまり気味のいい名まえではない。半蔵門から左へつづいたあの一帯が、今もその名の伝わる牛ガ淵ですが、むかしはあれを隠し井の淵ともいって、むしろそのほうが人にも世間にも親しまれる通り名でした。濠の底にありかのわからぬ秘密の隠れ井戸が六つあって、これが絶えずこんこんと水を吹きあげているために、その名が起こったとは物知りの話――。

「右門捕物帖 毒を抱く女」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「助宗、娘の岩路はそちを無事に高野へ落とそうと、悲しい孝道たてて、毒をあおったぞ。罪は憎いが、心さま思えばふびんな最期じゃ。江戸へ行ったら、せめても娘へのたむけに諸事神妙にいたせよ」  白々と夜が明けかかった……。

「右門捕物帖 毒を抱く女」佐々木味津三(青空文庫)

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