右門捕物帖 左刺しの匕首(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
錠の下りた牢内の刺殺
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 17,976字
- 読了目安
- 約36分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第三十五話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。鼻がちぎれるような年の瀬の寒い朝、伝馬町の牢屋同心が素はだしで右門のもとへ駆けこんでくる。錠も破られていない牢の中で、囚人の一人が匕首で胸を刺されて死んでいたのだ。不敵な囚人たちがひしめく牢内に乗りこんだ右門は、牢名主の重ね畳や食事の箸の持ち方にまで目を光らせる。牢屋という閉ざされた場所を舞台にした一編。
あらすじ
年の瀬の早朝、伝馬町の牢屋同心源内が右門を頼って駆けこんでくる。丑満の見回りで、三番牢の囚人が匕首で胸を刺されて死んでいたという。錠は破られておらず、外から入った者はいない。右門は牢に入り、死者の指先からお店者と見抜き、傷口が下から上へ走っていることに目をとめる。牢名主の重ね畳をどけさせると、三枚目の畳の裏から血のついた匕首が出てきた。右門は囚人たちに食事をふるまい、左手で箸を持つ男を見つけて引き出す。殺された豊太と、左ぎっちょの梅五郎は、どちらも茅場町の両替屋鈴文の手代で、同じ日に入牢していた。罪状は主家の金千百三十両の使いこみだが、二人はそれぞれ自分の罪だと言い張り、互いに罪をかばい合っていたという。担当はあばたの敬四郎だった。右門が茅場町を訪ねると、鈴文は傾きかけ、老いた主人と丁稚がしょんぼりと店番をしている。ひと月前に暇を取った番頭の新助が、その真向かいに鈴新という両替屋を新しく構え、愛嬌のよい十八、九の娘とともに繁盛していた。右門が牢へ引き返すと、源内が牢番を責めていた。右門は、床屋帰りの牢番の顔色から、娘に色仕掛けで頼まれて匕首を差し入れたことを白状させる。引き出された新助は、三年がかりで主家の金をかすめて店を出したことを認めた。二人の手代は罪をかぶる代わりにそれぞれ娘の婿になると言い出し、娘の好いた梅五郎に、新助が豊太を殺させたのだった。右門は千百三十両を鈴文に返させ、手柄は敬四郎に譲る。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。年の瀬の牢内の殺しを調べる
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。牢屋同心を連れて右門のもとへ来る
- 源内 伝馬町の牢屋同心。素はだしで右門に助けを求める
- 梅五郎 茅場町の両替屋鈴文の手代。左ぎっちょ
- 新助 鈴文の番頭だった男。ひと月前に暇を取って両替屋を開いた
冒頭部(原文より)
1 その第三十五番てがらです。 鼻が吹きちぎられるような寒さでした。 まったく、ひととおりの寒さではない。いっそ雪になったらまだましだろうと思われるのに、その雪も降るけしきがないのです。
「右門捕物帖 左刺しの匕首」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
「心得たり! さあ、これでもちがつけるんだ。とみにうれしくなりやがったね。一句飛び出しやがった。――もちもちと心せわしき年の暮れ、とはどうでござんす」 風がつめたい……。
「右門捕物帖 左刺しの匕首」佐々木味津三(青空文庫)
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