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右門捕物帖 因縁の女夫雛(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

ひな祭りの日、すり替わった男雛

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
22,800字
読了目安
約46分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第二十二話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。三月三日、ひな祭りの当日、江戸の管轄の外にある内藤新宿の内藤駿河守の下屋敷から、右門を名ざした朱房の文箱が届く。差出人は屋敷に住むご後室。孫娘がいいなずけの家から預かっていた由緒ある男雛が、いつの間にか偽物とすり替わっていたという。桜の満開の季節、雛人形をめぐる恋のもつれを、右門がやさしく解きほぐす。

あらすじ

ひな祭りの日、右門は内藤駿河守の下屋敷に住むご後室に招かれる。孫娘の春菜は七つの年に同じ家中の重役古島家の長子といいなずけになり、その印に古島家伝来の内裏雛を分け、春菜が男雛を、古島家が女雛を祭ってきた。十八の年の五月五日に輿入れする約束である。ところがこの日、白酒祝いの席で男雛が偽物とわかり、古島親子は激怒。そのさなかに春菜が姿を消し、後を追わせた腰元の多根まで見えなくなったという。偽の雛を手にした右門は人形町の人形屋を回り、古島雛そっくりのまがい雛が五両で飛ぶように売れているのを見つける。卸しに来た者の素性はどの店でもわからない。右門は、雛に使われた京金襴の出どころを伝六と手分けして探り、四谷左門町の人形師、桃華堂無月にたどり着いた。無月は盗みを否み、ある女の頼みで偽作を作ったのは、腰元の多根だと明かす。屋敷に戻ると多根の荷物は兄の浪人敬之丞のもとへ運び出されていた。右門がご後室と路地奥の敬之丞の住まいを訪ねると、そこには春菜と多根がいた。男雛を隠したのは春菜自身だった。春菜は多根の兄敬之丞と忍び会う仲となり、いいなずけとの約束を破る覚悟でいた。多根は身分違いの恋は主人の不幸と案じ、偽の雛を作らせて縁談を無事に運ばせようとしたのである。ご後室は孫の恋を許し、雛は古島家へ返されることになった。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――その第二十二番てがらです。  場所は少しく飛んで、いわゆる江戸八宿のうちの一つの新宿。竹にすずめは仙台侯、内藤様は下がり藤、と俗謡にまでうたわれたその内藤駿河守の広大もないお下屋敷が、街道ばたに五町ひとつづきの築地べいをつらねていたところから、当時は内藤新宿といわれたものですが、品川の大木戸、ここの大木戸、共に読んで字のごとくその大木戸が江戸との境で、事実は町つづき軒つづき、新宿のねこきょうも江戸に通いけり、という戯れ句があるくらいですから、江戸八百八町に加えてもさしつかえはなかろうと思われるのに、大木戸を一歩外へ出るともう管轄違いです。

「右門捕物帖 因縁の女夫雛」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「いいえ、だからはこっちでいうことなんだ。べっぴんのなかにもああいう掘り出しものがいるんだからね、親のかたきみてえに、目の毒だの、如夜叉だのと悪口いうもんじゃねえんですよ」 「そうよな。たまには顔も心もそろったべっぴんがいるのかな」 「ちぇッ、それほどものがわかっていたら、なんでだんなもはええところ五、六人見つけねえんですかよ。あっしが気がきかねえようで、江戸のみなさまにも会わする顔がねえじゃござんせんか。了見入れ替えて、お捜しなさいましよ!」  声の流れていくあとへ、夜桜ふぶきが無心にはらはらと散って流れて舞いました。

「右門捕物帖 因縁の女夫雛」佐々木味津三(青空文庫)

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