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右門捕物帖 開運女人地蔵(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

永代橋にさらされた六地蔵

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
22,254字
読了目安
約45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第二十九話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。四月の初め、寺社奉行所から右門のもとへ、手に余る珍事の助力を求める書状が届く。深川の興照寺から盗まれた六体の石地蔵が、永代橋の上に捨てられていたという。伝六はつまらぬ詮議と鼻であしらうが、出向いた右門の前にあったのは、無残に傷つけられた地蔵と、その前にちょこなんと座る九つの小坊主だった。小坊主珍念の愛らしさが光る一編。

あらすじ

深川興照寺の六体の石地蔵が盗まれ、永代橋の上に捨てられた。駆けつけると、地蔵はどれも鼻を欠かれ耳をそがれ、頭に馬の古わらじを載せられていた。その前には九つの小坊主珍念が座りこみ、地蔵の番をしている。珍念によれば、この六体は本寺の一真寺から分かれる時に贈られた地蔵で、本寺の六体と合わせて女人地蔵と呼ばれ、施主はみな女。背には六人の女の名と町名が刻まれ、寄進はおととしだった。興照寺の住職は二十三の美男だと聞いた右門は、川向こうの一真寺を訪ねる。住職の蓮信は、残る六体を厳重に囲い、弟弟子の興照寺住職は行状がよくないとほのめかす。説教日割りから興照寺へ回ると、住職が女を送り出すところだった。伝六が探ると、女は深川で湯女をしている住職の実の姉で、病の身で加持祈祷に通っていたにすぎない。六人の施主も、五十九を頭とする裕福な年寄りの後家ばかりで、色恋の筋は外れた。翌朝、一真寺の裏の一本道で、四人の浪人が死んでいるのが見つかる。二人は斬られ、二人は毒入りの酒を飲んで倒れ、懐には合わせて五十両があった。右門は四人が金を山分けしようと殺し合ったと見抜き、包み紙の線香の匂いから、金の出どころを一真寺とにらむ。蓮信は、末寺の繁盛をねたみ、地蔵をさらし者にすれば施主たちが興照寺を見限って本寺に戻ると考え、浪人たちを雇ったと白状した。右門は人目を避けて裏門から自訴に向かわせる。そこへ珍念が約束のおはぎを持って駆けてくる。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  その第二十九番てがらです……。  事の起きたのは四月初め。――もう春も深い。  小唄にも、浮かれ浮かれて大川を、下る猪牙船影淡く、水にうつろうえり足は、紅の色香もなんじゃやら、エエまあ憎らしいあだ姿、という穏やかでないのがあるとおり、江戸も四月の声をきくとまず水からふぜいが咲いて、深川あたり大川の里、女もそろそろ色づくが、四月はまた仏にも縁が深い。――花御堂の灌仏会、お釈迦さまも裸になって、善男善女が浮かれだして、赤い信女がこっそり寺の庫裡へ消えて、数珠と杯を両手の生き仏から怪しい引導を渡されるのもこの月にしばしば聞くうわさの一つです。

「右門捕物帖 開運女人地蔵」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「ウフフ。賢いことでありますのう。なるほど、そんなお約束をいたしましたな。では、遠慮のういただきましょうよ」 「あい。どうぞたくさん……」  くるくると愛らしく丸めながらふり仰いだ珍念の黒い小さいひとみには、うれしさ余ってか、清浄な、純真な涙の露が見えました。

「右門捕物帖 開運女人地蔵」佐々木味津三(青空文庫)

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