右門捕物帖 袈裟切り太夫(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
御家人の妻を刺したのは誰か
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 22,682字
- 読了目安
- 約45分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第十九話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六、小男の善光寺辰が江戸の事件を解く連作。紅葉の秋、浅草や両国の見世物が評判をとるなか、伝六に誘われながら黙りこむ右門は、辰を連れてうなぎを食べ、両国の猿芝居をのぞく。舞台では猿たちが盛遠と袈裟御前の悲劇を真に迫って演じていた。そこへ遅れて駆けつけた伝六が、ご家人の屋敷で起きた奇妙な殺しを持ちこむ。
あらすじ
秋の非番の日、右門は辰を連れてうなぎを食べ、両国で評判の中村辰太夫の猿芝居を見物する。猿が遠藤盛遠と袈裟御前の悲劇を演じる舞台に右門も感心していると、伝六が駆けこんでくる。大御番組のご家人井上金八の屋敷で、その妻が夜具の中で刺し殺されたという。金八は妻より七、八つ年下の美男で、妻はわずかな小柄の傷で死んでいた。伝六は、前夜将軍が伊豆守の下屋敷へ紅葉見物に出た際、金八が徒歩供として勤めに出ていた証拠を手柄顔で示し、さらに袖垣のそばで油じみのついた杖を見つける。金八は、杖は出入りの座頭仙市のものだと言う。仙市の家へ踏みこむと、仙市は床の間の前で震えていた。右門は仙市が実は目あきだと見抜き、話を聞き出す。前夜、女中のお葉の使いで呼ばれて屋敷へ行くと、奥の部屋は真っ暗で、血に驚いて逃げ帰ったが、その時、庭に猿がいるのを見たという。屋敷で鼓の音がしていたとも聞いて、右門は事件の形を見通す。伝六を伊豆守の屋敷へ走らせると、金八は腹痛を口実に供べやを抜け出していたとわかり、辰には、猿芝居の袈裟切りを演じる猿が前夜いなくなっていたことを確かめさせた。右門は、お葉といちゃつく金八の屋敷へ乗りこみ、鼓と猿の一件を突きつけて白状させる。金八はもと猿回しで、年上の妻に見込まれて入り婿となりご家人の株を手にしたが、お葉と通じて妻がじゃまになった。猿を鼓でおびき寄せ、眠る妻を袈裟御前に見立てて刺させ、座頭に罪を着せようとしたのだった。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。猿芝居の見物から事件の筋を読む
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。髪結い床で事件を聞きつけて駆けこむ
- 善光寺辰 右門の手下の小男。猿芝居の楽屋を洗う
- 井上金八 大御番組のご家人。殺された妻より七、八つ年下の美男
- 仙市 井上家に出入りする座頭。現場に杖を残していた
冒頭部(原文より)
1 ――このたびはその第十九番てがら。 前回の名月騒動が、あのとおりあっけなさすぎるほどぞうさなくかたづきましたので、その埋め合わせというわけでもありますまいが、事の端を発しましたのは、あれから五日とたたないまもなくでした。もちろん旧暦ですから、九月も二十日を越えると、大江戸もこれからがもみじの秋で、上野のお山の枝々こずえに、ちらほらとにしき模様が見えるようになるといっしょで、決まったように繁盛しだすのは浅草と両国河岸の見せ物小屋です。このとき浅草で評判とったのが、上方下りの生き人形に、隼伝之丞の居合い抜き、両国河岸のほうでは、娘手踊りに中村辰太夫が勧進元のさるしばいでした。
「右門捕物帖 袈裟切り太夫」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
しかるに、伝六あにいがまた右に左にそろそろと首をひねりかけようとしたものでしたから、押えて名人がずばり。 「わかった! わかった! ひねらなくともわかっているよ。さると聞いて、なぜにまた袈裟切り太夫にホシをつけたか、そいつがふにおちねえというだろうが、だからいわねえこっちゃねえんだ。どろぼうを見てなわをなうんじゃあるめえし、あわてて髪床や朝湯に行くひまがあったら、さるしばいも見ておくもんだせ、見たからこそピンと否やなく眼がくるんだからな、どうだい、これで堪能したかい」
「右門捕物帖 袈裟切り太夫」佐々木味津三(青空文庫)
原文を読む
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