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右門捕物帖 首つり五人男(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

首尾の松に五人の首つり

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
25,893字
読了目安
約52分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第三十四話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。九月九日、重陽の節句の夜。奉行所の面々の菊見の宴に遅れた伝六から、「伝六大事命があぶねえ」と震える字の急用の手紙が届く。駆けつけた大川べりの首尾の松の枝には、五人の男が首をつってぶらさがっていた。心中と土左衛門舟と川目付が増えるという秋の大川を舞台に、謎が謎を呼ぶ一編。

あらすじ

重陽の節句の夜、菊見の宴に遅れた伝六から助けを求める手紙が届き、右門は大川べりへ駆けつける。川面に突き出した首尾の松の枝に、五人の男がぶらさがっていた。死骸はみな目を見開き、懐は空で、手がかりもない。右門は五人のがんじょうな手から船頭と見定め、川を見回る土左衛門舟の船頭たちに聞きこむが、人相も風体もわからない。伝六を船宿めぐりに走らせ、右門は一晩待つが、伝六は帰らない。翌朝、北鳥越の自身番に預けた五つの死骸が夜のうちに盗まれ、またもとの松の枝につるされていたと知らせが来る。自身番を調べると、紛失の直前に、お高祖頭巾の女がのぞきに来ていた。女のあとをつけていた伝六は、大御番組の空き屋敷の前で見張っていた。女が入ったきり、出てきたのは二十七、八の男だけ。屋敷には三蓋松の紋のちりめんの着物が脱ぎ捨てられていた。右門は着物にからむ紅糸から、一石橋の呉服後藤が小石川の鍼医吉田法眼の後室に納めた品と突きとめる。後室の屋敷の下男部屋には、深川の船宿於加田のちょうちんがあった。右門たちが深川へ回ると、於加田からしめなわを張った七艘の舟が、女の客を一人ずつ乗せて大川をさかのぼっていく。あとをつけると、行き着いたのは女ばかりが詣でる「お富士教」の社だった。幔幕の三蓋松の紋を見た右門は内陣の奥へ踏みこみ、緋のはかまの教主を押さえる。教主は女に化けた男で、女たちをたぶらかして金を集め、秘密を漏らしそうになった手先の船頭五人を絞め殺し、見せしめにつるし直したのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  その第三十四番てがらです。  事の起きたのは九月初め。  蕭々落莫として、江戸はまったくもう秋でした。  濠ばたの柳からまずその秋がふけそめて、上野、両国、向島、だんだんと秋が江戸にひろがると、心中、川目付、土左衛門舟、三題ばなしのように決まってこの三つがふえる。もちろん、心中はあの心中、川目付は墨田の大川の川見張り、やはり死によいためにか、十組みのうち八組みまでは大川へ入水して、はかなくも美しい思いを遂げるものがあるところから、これを見張るための川目付であるが、土左舟はまたいうまでもなくそれらの悲しい男仏女仏を拾いあげる功徳の舟です。

「右門捕物帖 首つり五人男」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「決まってるじゃねえか。金と女を両天秤にかけて、こんなあくどい狂言をうったんだ。手先に使っておったあの五人の川船頭が、漏らしてならねえ秘密を漏らしそうになったんで、荒療治をやったのよ。掛け直したのは、残った船頭たちへの見せしめさ。もっと理詰めで考えるけいこをしろい」 「なるほどね、大きにそれにちげえねえや。久方ぶりに、だんなも荒療治をおやんなさいましたな」 「あたりめえだ」  吐き出すようにつぶやくと、毒手にかかった女たちをあわれむように、黙々と目をとじました。

「右門捕物帖 首つり五人男」佐々木味津三(青空文庫)

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