右門捕物帖 曲芸三人娘(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
右門を狙う手裏剣少年のわけ
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 20,870字
- 読了目安
- 約42分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第十四話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作で、本編から投げなわの名手で背丈四尺八寸の小男・善光寺辰が、松平伊豆守の推薦状を携えて右門の手下に加わる。新しい顔ぶれで出かけた遠出の帰り、右門に向かって小柄の雨を浴びせたのは十五、六の少年だった。少年は「めくら役人」とののしり、死んでやると泣きわめく。浅草奥山の娘軽業一座を舞台にした一編。
あらすじ
伊豆守の推薦で、投げなわの名手善光寺辰が右門の手下に加わる。四月八日の夜、遠出から帰った右門たちに、十五、六の少年が小柄を投げつけてきた。取り押さえて水を浴びせると、少年は、浅草奥山の娘軽業一座で竹棒渡りをする姉の桜丸が、女親方殺しの下手人として「むっつり右門」に引っ立てられたと訴える。右門には覚えのない話で、何者かが右門の名をかたったのだった。右門は紫ずきんで顔を隠して小屋へ乗り込む。女親方は乳の下を刺されて死んでおり、楽屋番の話では、明かりが消えた間に部屋へ入った者はないという。畳の上に落ちていた布の切れはしと、少年から聞いた一座の花形三人娘、梅丸・竹丸・桜丸の間柄を手がかりに、右門は二人の娘に舞台で芸を演じさせる。梅丸の衣装のそでを改めると、桜の模様の下にもう一枚違う衣装が重ねてあり、すそが食いちぎられていた。右門がずきんを取って素顔を見せると梅丸はうろたえる。一座には若い男にも化ける五十過ぎの百面相の芸人鶴丈がいた。右門は小屋を出たふりをして待ち伏せ、高飛びしようとした梅丸と鶴丈を捕らえる。梅丸は親方といさかいのあげく匕首で刺し、親方が苦しまぎれに食いちぎったすそを隠して、駆けこんだ桜丸に罪を着せ、鶴丈に右門を演じさせて桜丸を連れ出させたのだった。大川へ突き落とされた桜丸は荷足船に救われて戻り、弟と抱き合う。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。自分の名をかたった者を追う
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。新参の辰に兄貴風を吹かす
- 善光寺辰 四尺八寸の小男で投げなわの名手。伊豆守の推薦で右門の手下になる
- 手裏剣少年 娘軽業一座の桜丸の弟。姉を連れ去った右門を恨んで小柄を投げつける
- 梅丸・竹丸・桜丸 浅草奥山の娘軽業一座の花形三人娘
冒頭部(原文より)
1 ――だんだんと回数を重ねまして、名人の捕物帳もいよいよ今回は第十四番てがらとなりましたが、目のあるところには珠が寄るのたとえで、ご番所のご記録帳によりますと、なんとも愉快千万なことには、この十四番てがらから、新しく右門の幕下にすばらしい快男児がいまひとりはせ加わりまして、おなじみの人気わき役おしゃべり屋の伝六とともに両々力を合わせながら、ますます名人の捕物さばきに痛烈無比な精彩を添えることになりましたから、それから先にご紹介しておきたいと思います。
「右門捕物帖 曲芸三人娘」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
「そこがいわくいいがたしだが、いずれは娘のたいせつなものでもちょうだいができる約束でもあったろうよ。だから、梅丸もそこは人気稼業で、若い男ででもあらば格別、相手の五十男であったことが恥ずかしくて、なかなか口を割ろうとしなかったろうさ」 それにしても、女は魔物だな、といわぬばかりに、ややしばしことばをとぎっていましたが、やがてつぶやくようにいったことでした。 「――考えてみりゃ、きょうはお釈迦さまのお生まれなさった日のはずだったが、それだのにあんな罪劫の深いやつらがいるところを見ると、まだご功徳がお足りなさらねえのかな」
「右門捕物帖 曲芸三人娘」佐々木味津三(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。