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右門捕物帖 京人形大尽(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

黒猫がくわえた丁子油の髪

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
27,366字
読了目安
約55分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第十五話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六、新参の善光寺辰の三人が江戸の事件を解く連作。春の夜ふけ、右門の寝入りばなを伝六がたたき起こす。辰が気がふれて、猫のように鳴きながら屋根を走り回っているというのだ。辰が追っていたのは、女の髪の毛をくわえた一匹の黒猫。都ぶりの髷に結われ、丁子油の香るその髪の毛を手がかりに、右門は人形師から吉原へと夜の江戸をたどってゆく。

あらすじ

四月の夜ふけ、善光寺辰が猫の鳴きまねをして屋根の上を追い回し、ついに黒猫が人形の首からはいだらしい女の髪の毛をくわえているのを捕らえる。丁子油の香る都ぶりの髷を手がかりに、右門は練塀小路の人形師藤阿弥を訪ね、三日前に吉原の幇間蛸平の注文で、持ちこまれた髪の毛を京人形の首に植えたと聞く。吉原に乗りこむと、蛸平は逃げ出し、揚屋では老いた大尽が京人形を娘と呼んで抱きしめ、黄金の小判をまき散らしていた。白刃を突きつけて正気と見破ると、大尽は日本橋の近江屋勘兵衛と名のる。一人娘のお妙が手代の弥吉と言いかわしたのに怒り、三千両持ってこいと突き放したところ、翌朝弥吉が三千両を持参したので、蔵から盗んだと責めて追い出した。お妙は家出し、髪の毛を形見に届けさせたあと、深川で傷だらけの水死体となって揚がった。悔いた勘兵衛は、娘の髪で人形を作らせ、金を使い果たして供養しようとしていたのである。右門は錠のかかった土蔵を調べ、戸の合わせ目に詰まった塩豆から、勘兵衛と見回りに来た丁稚の次郎松が、錠をかけたように見せる細工をしたと見抜く。十四の次郎松は、二人の恋を思って三千両を運び出したことを白状した。次郎松が大事にする金襴の守り袋と手紙から、右門は青梅の尼寺へ向かう。夜、垣根越しに忍び会う尼姿のお妙と弥吉がいた。お妙は入水を思い立ったが、身元の知れぬ水死体を哀れんで自分の身代わりに弔わせ、尼寺に身を寄せていたのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――前章の化け右門事件で、名人右門の幕下に、新しく善光寺辰なる配下が一枚わき役として加わり、名人、伝六、善光寺辰と、およそ古今に類のない変人ぞろいの捕物陣を敷きまして、いと痛快至極な捕物さばきに及びましたことはすでにご紹介したとおりですが、いよいよそれなる四尺八寸の世にもかわいらしいお公卿さまが幕下となって第二回めの捕物、名人にとっては、ちょうどの十五番てがらです。事の勃発いたしましたのはあれから半月と間のない同じ月の二十六日――しかも、おおかたもう四ツを回った深夜に近い刻限のことでした。

「右門捕物帖 京人形大尽」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

 と――、伝六がにやにやとやっていましたが、すばらしく気のきいた名句を吐きました。 「大きにまだ気に入らねえんですよ。だんなはこれで幾組み、他人の恋路の仲立ちをなさったかしらねえが、ひとのお取り持ちばかりをしねえで、ちっとはお自分の恋路のほうも才覚おしなせえよ。ひとごとながら、ほんとに気がもめるじゃござんせんか」  そのとおり、そのとおりというように、うしろから尼僧院のいと静かなる聖鐘が、物柔らかく一行の影の上に流れ渡りました。

「右門捕物帖 京人形大尽」佐々木味津三(青空文庫)

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